短編U
□声の記録
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「これにかごめちゃんの声が入ってるの?」
「そう、私がいない間犬夜叉がもし何かしでかそうとしたらこれで脅してやってね」
そう言ってかごめが珊瑚に渡したのは安っぽい録音機だった。草太が学校で貰ってきたものの使い道がなかったそれに、かごめはあの言葉を吹き込んだのだ。
「ここを押すとね…ほら」
『おすわり!おすわり!おすわり!』
見たこともない機械が言霊を言う。不思議な現象に珊瑚は目を丸くした。
「わあ!ほんとにかごめちゃんの声だ」
「うん、まあ本当に犬夜叉に効くかはわからないけど、脅し程度にはなると思うから一応持っててね。……ごめんね、五日も帰ることになっちゃって」
「仕方ないよ、かごめちゃんは向こうの生活もあるんだろ。引け目を感じることなんてないさ」
優しい友人の言葉にかごめはぽっと頬を染める。嬉しそうに微笑むと、じゃあ、と言ってそのまま井戸に飛び込んだ。
かごめが留守の間、残された仲間たちはそれぞれに村の仕事を手伝っていた。男二人は畑で土と虫にまみれながら雑草を抜く。