短編U
□休息
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骨休みということで久々に現代に帰って来た二人はベッドの前の床に座り、会話のないまま肩を寄せあっていた。
ぼんやりと目に入る机の上の参考書からは目をそらし、何か隣の彼を楽しませることができるものはないだろうかと女は思考を巡らせる。
そして思い付いたのは自分でもびっくりするほど子供らしい遊びだった。
「ねえ犬夜叉、相手がして欲しいことをしてあげるゲーム、しない?」
「なんだそれ」
腕を組んだまま視線だけちらりとかごめに向ける。
「そのままよ。お互いに尽くし合ったら楽しいじゃない」
「ふうん……」
全く興味の無さそうな相槌だが、反応をしたということは彼にとっての了承である。かごめはそれをよくわかっていた。
「言われたことは絶対だからね。じゃあ犬夜叉、私からね。“笑って”?」
「…………」
「笑ってよ」
「これでも笑ってるぞ」
「…………」
眉間にしわを寄せて獲物に狙いを定めるような――そんな目付きをして笑顔だと言い張るのか。
なんとなく気まずくなり暫し沈黙する。
「じゃあ次犬夜叉、何か言って。私が見本を見せてあげるわ!」
そうだ、最初からそうするべきだったのだとかごめは気付いた。自分がこれでうまく彼を喜ばせることができたら、きっと同じようにそうしてくれる。
「突然そう言われてもな」
またもや渋い顔をして考え込みだす犬夜叉。その横顔をじっと見つめていると突然彼が顔をかごめへと向けたため、思わず彼女は驚く。
「き、決めた?」
「おう」