短編U

□そのまま
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犬夜叉とこっちの世界で暮らし始めて、もう五年になる。

今日は愛娘を楓ばあちゃんに預けて、いつぶりだろうか−−ほんとうに久々の、二人きりのデート。




「なーんか久しぶりだね、こうやって二人でのんびり歩くの」

揺れる草木の中、恋人みたいに手をつないで上機嫌。時々腕にしがみついたりしてみると、すぐにあかくなる夫が昔と変わらなくて愛おしい。

「だああ!そんなにひっつくと歩きにくいだろ!」

「いいじゃないの、くっついていたいんだもん」

にこっと笑ってあげれば、ほら、ぐぬぬ…と唇を噛み締めて苦い顔。可愛らしい、私の大好きな表情のひとつ。

「わたし、ほんっとーに、犬夜叉のこと好きなんだなあって思うよ」

ぴくりと犬耳が反応する。立ち止まった彼は、なんだよ突然…とでも言いたげな目をこちらに向けた。

「毎日ね、犬夜叉のことを好きだなあっていう気持ちが大きくなってるの。愛の期限は3年なんて、誰が言ったんだろうね」

私の気持ちは昔と比べて衰えるどころか、加速している。どこまで愛したらいいのかわからなくて怖いくらい。

「愛のきげん…」

繰り返す犬夜叉。あんまり意味を理解してないのか、首を傾げている。
しばらく悩んでる素振りを見せた後、突然私は腕をひかれた。

「あっ」

赤い衣にぽすんと顔が埋まって、思わず漏れた声。
すーっと鼻をすってみると、もう嗅ぎなれた優しい香りに癒される。犬夜叉はわたしの匂いが好きだっていうけど、わたしも負けないくらいに彼の匂いが好きだ。

「かごめ…」

名前を呼ばれていまだにドキリとするのも、ほんとうに信じられない。

「なーに、犬夜叉」

すりすりと衣に鼻をおしつけながら返事をする。

「おれも、かごめのことずっと好きだ。あいつを産んでくれて、もっと好きになった。こうやって歩いてるだけでも、もっと好きになってる」

ギューっと痛いくらい抱きしめられて、幸せに包まれる。恋の情熱、愛の情熱……そんなものすぐに冷めてしまうよ、なんていう人もいるけれど。一年旅をともにして、会えなかった月日を越えて、こうして五年間夫婦として過ごして、まだこんなに彼にときめいている。
あと10年先も、20年先も、きっと私たちはこのままの気持ちで。



「そのままでいてね、犬夜叉」

「おめーもな。この先もし犬耳が気に入らないとか言い出したらはったおすぞ」

「なにいってるのよ、ばかね」




こうやって隣で笑い合おう。






end

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