短編U

□狼のきっかけ
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きっかけは、ささいなことだった。


「てめーほんとーについてんのかよ」


かごめと夫婦となり結ばれてから、まだ一度も契りを交わしたことがないと打ち明けた犬夜叉に対して鋼牙が発した一言だ。

「んなっ…!つ、ついてるに決まってんだろ!!」

鼻息を荒くしてそう答える。

「だったらなんで手出さねえんだよ」

「おれとかごめはそんな簡単じゃねえんだ!だから悩んでるんだよ」

「簡単じゃない、ねえ…」

フーフーと敵意をむき出しにする犬夜叉に対し鋼牙は白い目だ。

「おれから言わせりゃ、ただおまえが手を出すことにビビってるようにしか見えねえけどな」

「ぐっ」

なんだなんだで長い付き合いの二人だ。また同じ女を好きになった者同士だからだろうか、互いの胸の内を見透かすこともお手の物。
図星をつかれた犬夜叉は押し黙った。
愛してた女がようやく帰ってきたというのに今だに一歩踏み出せないでいる元恋のライバルに鋼牙は深〜いため息をひとつ。

「おれの口からこんなこと言いたくねえが、あんまりかごめを待たせて不安にさせんじゃねえぞ」

「……わあってるけどよ、本当にかごめもそれを望んでるのかどうかは」

「だああ、うるせーな。とっとと帰れ犬っころ。かごめがうまい飯つくって待ってんだろ!」

うらやましい!という言葉はギリギリのところでのみこみ、妖狼族の巣から犬夜叉を追い出した。
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