短編
□君だけに見せる顔
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「かごめ、はい!」
「任せて!」
バシッと言う音とともに、相手コートにボールが打ち込まれる。
「ナイスッ」
ハイタッチを交わすと、由加が手の甲で汗を拭いながら涼しげな顔をしているかごめの肩にもう一方の手を置いた。
「かごめ、あんた今年になってからすごい体力ついたよねー。私なんかもう汗だらだらよ。
なんか運動でも始めたの?」
「え?あ、うん、ちょっと・・・」
戦国時代で嫌でも走り回されるから──とは口が裂けても言えないだろう。
彼女は適当に言葉を濁すと曖昧に頷いてみせた。
「へー、どんなことしてるのか教えて!」
「えーと・・・ああ!チャイム鳴っちゃった!着替えなきゃー」
「え、かごめ、ちょっ・・・」
「ごめんねー!」
その場を切り抜けたかごめは、1人体育館へダッシュしようとした。
しかし、
ぐいっ
と手を引っ張られ、体が傾く。