長編
□感情分裂
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七宝は好奇心からすぐさま男の元へと駆け寄った。
男は薬売りのようだった。
薬と言っても病を治すものではなく、「身長が伸びる」「急激に太る」「動物の気持ちがわかる」などいかにも怪しいものばかりだ。
胡散臭さにどんどん村人も散っていく。
七宝も「アホじゃ」とだけ呟いて背を向けたが、最後の男の言葉に足を止めた。
「これは本音を聞けちゃう薬だよ〜!」
途端に目が輝く。七宝は懐からドングリをたくさん取りだし男に差し出した。お金がないためにこうするしかなかったのだ。
「一つくれ!」
男は自分の薬に興味を持って貰えたのが嬉しく、喜んでドングリとそれを交換した。
葉に包まれた薬を握りしめ、七宝は走って楓の小屋へ向かった。
(“本音を聞ける薬”・・・これを犬夜叉に飲ませれば!)
犬夜叉が素直になればかごめが悲しむことなどなくなる。大好きな彼女の喜ぶ顔を想像し、ほんのりと赤くなる七宝であった。
「待っておれかごめ!」