短編U
□辿るべき道
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それにしても──
「今、いつもと少し違ったような……」
拭えない不信感にかごめはしばらく自分が手をつく井戸の底を見つめていたが、やがて黙っていても仕方がないと立ち上がった。
「よいしょっと」
太いツルをよじ登り井戸から出て辺りを見回す。いつもなら直ぐに匂いを嗅ぎ付けて走ってくる彼が今日は見えないことに、期待していた分大きなため息が出た。
「ほんとに迎えに来てくれないんだ、犬夜叉」
それから三日ぶりの澄んだ鳥の声に耳をすませながら村へと続く道を一人歩いてる時、かごめは新たな異変に気づいた。異常なほど、静かなのだ。村人の声も聞こえなければ七宝の駆けてくる気配もない。
「どうしたんだろう」
不審に思いながらも足を進めていると道を少し外れたところに一人の少女がしゃがんでいるその背中が目に入った。
「ねえ」
村に何かあったのか聞くため早速声をかける。
「はい?……きゃあ!」
振り向いた少女はきょとんとした顔をしていたが、かごめのセーラー服を見るなり悲鳴を上げて後ずさった。
「ど、どうしたの?」
怯えられたということなのだろうか。少しショックを受けながらも問う。少女はセーラー服を指差しながら声を震わせた。
「そんな着物見たことない。もしかしてあなた……妖怪!?母上、母上を呼ばなきゃ!」
手に持っていた草を放して立ち上がり駆け出そうとした少女の腕をかごめは慌てて掴んで引き留めた。