短編U

□将来の夢
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「めんどくせーな。俺なんて奈落をぶった押したそのあとのことなんざ考えてねえよ」
「そりゃ時代が違うからね。あーもう、女の子なんて皆お嫁さんでいいじゃない!そう思わない?犬夜叉」

嫁。その言葉に彼の耳は敏感に反応した。

「え、あ、そうだな…お前がどうしてもっつーなら…」

モゴモゴと続きを濁す犬夜叉にかごめは頷き、張り切って今度こそペンを握った。

「うん、これならスラスラ書けそう。まず18歳で交際が始まって、23歳でプロポーズされて、25歳で第一子出産…っと。一応スピーチだし少子化とか一人っ子政策にも触れといた方がいいのかしら」

これからの未来を紙の上に並べていく様子を見ていた犬夜叉は慌てたように口を挟んだ。

「お、おい。そんなあっさり決めていいのか!」
「適当が一番よ」

短くそう返してかごめはあっという間に原稿用紙の半分ほどを埋めてしまう。犬夜叉は乱暴に彼女からペンを奪いそれをベッドへと無造作に投げ、細い腕をガシッと掴んだ。

「いや駄目だ!おれは……おれは!」




それから部屋のドアが開き

「かごめ、お菓子持ってきたわよ」

彼女の母がそう言って現れたのと、

「おれは、20の時にお前に子を産んでもらいたいんだ!」

犬夜叉が声を張り上げたのはほぼ同時だった。

長い沈黙の後、若い二人は状況を理解し一気に赤くなる。そんな様子を「あらあら、若いわね」なんて流してしまえる母はやはり強いとかごめは後に思うのだった。
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