小説

□憎しみを覆すと言うのならば
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枯れてしまったその大群の中を容赦もなく進んでゆく。
いつも一人で通っているけれど今日はあの人がいる。


「ねぇ、この花知ってる?」

そうね。初めて二人で行った時はベラベラと語ってしまった。
どうしても、この花がエクソシストを顕すものに見えて。


「世界を芳しくする花なのよ」


そう言って、私は笑った。
だってね、彼、凄く真剣に聞いてくれるんだもの。
今までこんな話をしても子供の妄想として捉えられてしまっていた。
蓮なんて、そりゃあチューリップだとか薔薇だとかコスモスとかよりはマイナーよ?
でもね、「遠く離れた愛」だなんてまるでエクソシストの方みたい。


「いつか」


そう言ってくれたのは、日差しが眩しい最後の日。彼は日を遮るように手を翳し、ぽつりと言葉を地に落とした。


「ホント!?」


嬉しかった。暗い教団で好き勝手に花を育ててる私に誰も興味を示さなかった。でも彼は私に聞いてくれた。


「なんて言う花?綺麗だね」


ホント?と聞くといつも見てるよ、と返してくれた。偽りの優しさかも知れない。そうは解っていても嬉しかった。


「珍しいね。」
「そうね。でも花は人々を癒してくれる、って信じてるの。」
「そう思うよ。いつも見てる、綺麗な花を」


そして舞い上がってつい連れていったんだっけ。楽しかったなぁ。
確か、思いを告げたのもあの場所で。
彼は随分と困ってたようだから少し猶予をあげた。


「ハナビラが落ちる前に」


きっと、1日2日では落ちない。だからそう言った。
彼は、笑った。
次の日は任務だから、と言って教団に帰っていった。


私は待ち続けた。

何日も、何日も。

帰ってこなかった。

帰ってきたのは、ボロボロになった団服だけ。


「遺体もない程、バラバラになったの?」
「…えぇ」


嗚呼、魂は何処へ言ったのかしら。
ちゃんと天に昇れたのかしら。


「ほら、満開よ」


団服に感じる温もりが愛しくて。

ほら、一緒に見れたね。




(彼女が第二使途計画を知るまでの細やかな幸せ)

(憎しみの連鎖が始まるまでのカウントダウン)










end?
 

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