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□完全敗北
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※割と下品



「ひっ、」


しゃああっ!と勢いよく飛んできた霧の刃に当てられてすっ転ぶ。背中に走るピリピリとした熱い痛みを感じながら、捕まってしまう恐怖にブルブル震えつつおもむろに振り返った。目の赤いリッパーさんが、鼻唄混じりに涙目の私を風船へと括り付けてそのまま椅子に座らせた、のだけれど…


「…!」


ドロリと私の身体が黒く溶け出していく。しまったというような顔で私を見たリッパーさんを最後に、私の意識は別の場所へと飛ばされて視界が霞んでいった。

ボンヤリとしたままドサリと誰かの腕の中に倒れ込んで目が覚める。「…イソップ、さん?」一瞬だけ目が合った彼の名を呟くと、しっとマスク越しに人差し指を当てるので慌てて黙った。そういえばゲームを開始してすぐにイソップさんとすれ違ったんだっけ…。まだはっきりとしない意識の中、キョロキョロと辺りを見回したイソップさんが私の手を引いて小走りで板の影へと導く。


「あ、ありがとうございます…」


ちょうど危機一髪の効力が切れたので、擦りむいてしまった膝を手当てしてもらいながらお礼を述べた。やっぱり器用だなぁ。綺麗に巻かれていく包帯を見ながらそんな事を思っていると、不意にイソップさんが私の後ろに回り込んできて。疑問に思ってる私の服をペロンとめくり出すので咄嗟に声を上げてしまう。


「…!?あっ、あの、なに、を、!」


慌てて服を押さえながら真っ赤な顔で振り向いた。すると眉を下げて申し訳無さそうな顔で私を見つめ返すイソップさんに、ふと自分が背中に傷を負っている事を思い出して我に返った。はっ、手当て、か…。うわっ、やだ、恥ずかしい、!


「ご、ごめんなさい」


今度は別の意味で真っ赤になりながら大人しく前へ向き直る。そうだよね、イソップさんがそんなセクハラみたいな事する訳ないよね…。不埒な想像をしてしまった自分を殴りたい衝動に駆られながら、少しでもイソップさんが手当てし易いように自分から服を脱いだ。イソップさんがぎょっとしたような顔を見せるので、慌てて私も弁解する。


「すみません、少しでも治療し易い方がいいかと思って…」


益々困ったような顔をしながらガーゼに消毒液を染み込ませるイソップさん。どうしてそんな顔をするのだろう…はっ、そうだよねこれがエマちゃんとかエミリーさんなら役得ドキドキってなるかもしれないけど。あなたのお色気シーンなんかに興味はありませんよってそう思われてるのかもしれない。脱いだ服で胸元を隠しながらひっそり青ざめる。はあああ、なんて身の程知らずな事をしてしまったんだろう。つまらない物をお見せしてすみません。せめてそう謝罪しようと思って口を開いたタイミングでイソップさんが手当てを開始したので思わず盛大に声を漏らしてしまった。


「ひゃうっ、!、」

「…!」


びくううっ!と私の後ろでイソップさんが震えたのが分かる。恐る恐る振り向くと、バクバクと跳ねているであろう心臓の辺りに手を当てながら青ざめるイソップさん。よっぽど驚かせてしまったらしい。こめかみに薄っすらと怒りマークを付けてムッとした顔を見せるイソップさんに慌てて言葉を発した。


「ごごご、ごめんなさい、黙ります」

「…」


無言の圧力を感じながら次の刺激に耐える心構えをする。消毒液の含まれた脱脂綿は少し冷たい。傷口に触れるだけでピリピリとした痛みが走って、僅かにピクピクと反応してしまう。


「…んっ、は、ぁ…」


いたい。率直に、痛い。そこまで深い傷じゃないけど、痛いのに弱い私からしたら普通に全然痛い。最近は怪我してばっかりだなぁ。痛いのと情け無いのとでじんわりと涙腺が緩む。それでも出来るだけ私を気遣って、ちょんちょんと優しく手当てをしてくれるイソップさんに有り難くもなった。うう、初めて会った時はシカトされまくりで目すら合わなくて私嫌われてるのかな…って思ってたけど。イソップさんいつもこうして助けてくれるし実は優しいいい人なんだ、とか思ってたら不意にビリリとした痛みが走って思わず「いっ、!ああっ!」と悶えてしまう。


「はあっ、イソップ、さ…」


少し前に崩れながら涙目で振り返る。イソップさんがゴクリと喉を鳴らして私の脇腹に自身の手を添えた。


「ごめんなさい、それちょっと痛い、です」


心なしか、イソップさんの息が少し荒い気がした。プツンとブラのホックが外されたのにビクリと震えながら、もう一度振り向いてイソップさん…?などとおずおずイソップさんを見やる。合わない視線を不安に思いながらも、静かに脱脂綿を交換する彼にきっと治療に邪魔だったんだよと言い聞かせて。私はゆっくり前を向き直す。心臓がドキドキしてきてリッパーさんが近くにいるのかもとも考えたけどそんな気配はしなかった。気付くと私の息も少し弾んでいる気がする。するりと、障害物の合間を掻い潜ってイソップさんの手が私の胸に触れたので大袈裟な程に飛び跳ねた。


「…!?あっ、あの!?」


プチパニックの私に構わずふにゅりと柔らかく胸を揉まれてビクビクしてしまう。マッサージのようにやわやわと触れてくるイソップさんに段々と身体の力が抜けて、奥の方からじわじわとしたもどかしさに襲われる。


「やっ、あっ!だめ、っ」


イソップさんの手から逃れようとして前のめりになると、追い掛けてくるようにイソップさんが私にのしかかってくるので地面に崩れた。その拍子にイソップさんの手の平が私の胸の先端に触れてビリビリとした物が走り抜ける。今度こそセクハラだとイソップさんに抗議しようとした刹那、1つの仮説が脳裏をよぎってまたもやはっ!とした。これはもしかして快楽を私に与える事で痛覚を鈍らせるというイソップさんの策略では?現に左手でやんわり私の胸を揉みつつ右手では背中の治療を進めている…!さすが、器用だ…。


「ひうっ、!」


でもまだ傷の痛みの方が強くて喉を引きつらせてしまうと、ついにイソップさんの手が私のスカートの中へと伸びた。そっ、それはちょっと!さすがに、!貞操の危機を感じて治療を振り切ろうとするものの、イソップさんに腰を引かれてぽすんと彼の腕の中に収まってしまう。そのまま薄い布越しに触れられて、焦らすように指を行き来させるので声が出てしまうのは不可避だった。


「んっ、ふうっ、…あっ、」


嫌だ、我ながらしっとりと濡れている気がする。最悪だ、うわ、恥ずかしすぎる。消えたい。色んな思いが渦巻く中で、ついにイソップさんの指が下着をずらして私の中に入ってきたのに思い切り身体が跳ねた。そのまま緩々とした手つきで指を出し入れされて、時折くっと浅く曲げるので堪らない。


「あっ、あ!だめ、イソップさっ!ああっ!そこっ、やだぁ」


もう背中の痛みなんて感じないくらいイソップさんに感じさせられていて。せめて声だけでもと必死になって手で口を押さえていたのだけれど、気が付いてしまった。腰辺りに何か硬い物が当たっている…。段々と馬鹿になっていく頭で、色事をなんにも分かっていないと冷やかされてきた私でもそれが何なのかはなんとなく察してしまって、一気に顔が熱くなった。まままま、まさか、そんな、イソップさんに限って私なんかに欲情するはずがな、「んあっ!」うっ、も、もうやだぁ、


ぐちゃぐちゃに掻き乱し始めたイソップさんに、もう私は半ば諦めモードで。ただされるがままに脱力していくとその衝撃は突然やってきた。ヘアっ!どこからか飛んできた霧の刃に髪や服がぶわっとはためいて、直撃を食らったイソップさんは頭上に星を飛ばしながら吹き飛ばされていた。突然の事態に目をパチクリさせていたものの、ブルリと全身を駆け抜けた悪寒に青ざめながら振り返る。

お願いします助けて下さいと懇願すれば、紳士で優しいリッパーさんならもしかするとハッチまで送って行ってくれるかもしれない。でも私にはイソップさんを見捨てて逃げる事も出来なくて、恐怖で震える手をぐっと握り締めてなんとか立ち上がった。全滅覚悟でイソップさんの元へ走ろうと試みるけど、案の定殴られてしまってその場に崩れ落ちる。


「あっ、う、」


どうせなら痛いのにも気持ちいいのにも耐えてさっさと治療終わらせて貰えば良かった。重たい頭を抱えながら後悔してももう遅いわけで。中途半端に火照った身体と乱れた服装にリッパーさんの視線が突き刺さってとても気まずい。目はもう赤くないのに、リッパーさんの目つきはさっき以上にギラギラとしている気がして心拍数が上がった。あの、リッパーさん、今何考えてます?まさか、まさかね?そんな…


「リッパー、さん、?」


いっそのこと早く吊って終わりにして欲しい。だけどリッパーさんはどこかねっとりとした視線で私の事を見下ろすだけで、失血死に近付いているのもあって冷や汗と動悸が止まらなかった。りっぱぁ、さん…。もう一度掠れた声で名前を呼んでみる。リッパーさんの手が伸びて、私の頬へと触れるなり愛おしそうに撫でるのでぞわりと戦慄が走った。ううっ、大人しく投降しよう…



20190123

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