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□最後まで可愛がって下さい
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※R15
ぶわっと、一気に全身に嫌な汗が噴き出す感覚がして目眩に襲われた。こ、これはもしかして最近よく噂に聞く何とかをしないと出られない部屋なのでは…?実際、目の前の扉は固く閉ざされていて、その上にはお題のような文字が並んでいるのに顔へと熱が集まった。
「(どちらか相手をイカせないと出られない…)」
あからさまな反応を見せる私に相対し、ジョゼフは「おやおや困った」だなんて悠長にも笑ってみせる。ぜっ、全然困ってるようには見えないけどっ!?ドキドキし過ぎてしまって苦しい。どちらか、というのは私かジョゼフかしかいない訳で。聞いた話によるとミッションをクリアしなければこの部屋からは一生出られないらしくて…。私がジョゼフの事を直視出来ないでいると、見兼ねたように彼から言葉を発してきた。
「私はどちらでもいいよ?」
キミを可愛がってあげるのも、逆に奉仕して貰うのも、どちらでもいいよ。そうフラットに告げるジョゼフに泣きそうになる。この際正直に言ってしまうと私はジョゼフの事が好きだった。いつも遠くで見つめていただけだったのが、最近少しずつお喋りをするようになって、漸く少しは仲良くなれたと嬉しくなっていた所なのに。こんな、こんなのって、無い。本来なら恋人同士が愛し合ってする行為の筈なのに。今から私たちがするのは強制的な物でそこに愛情なんて無いのだから。
「(…ジョゼフは、これが私じゃなくても同じ事を聞いて行動に移したのかな)」
それはそれで、ショックだ…。突然のステップアップに困惑して動揺を隠せないでいると、ジョゼフが痺れを切らしたように溜息を吐いた。
「で、どうするの?」
淡々と答えを求められたのにビクリと身体を揺らして身構えてしまう。ど、どうするって言われて、も…。男性経験の浅い私にジョゼフを満足させる事なんてきっと出来ない。となると、残された選択肢はただ一つな訳で…。じっとりと嫌な汗が滲む。伏し目がちに俯いて、自身の服を小さく握り締めながら私は意を決したように言葉を発した。
「…か、可愛がって、下さい」
「…」
恥ずかしい。既にパラメーター振り切ってて可笑しくなりそうだ。真っ赤になりながらおどおどする私にジョゼフも何故か無言だし。き、消えてしまいたい…!
「…そう。じゃあ取り敢えず座って、脚は開いてね。閉じたらいけないよ」
言われるまま、促されるまま、私はちょこんとジョゼフの前に座り込んでぎこちなく脚を45度に開く。ドキドキと跳ね回る心臓が忙しない。膝をピタリとくっつけたまま身を縮こまらせていると背後にジョゼフの座り込む感覚がして肩が強張った。後ろからジョゼフの腕が回されてきて膝をそっと割られる。そのまま大きく脚を開かれていくのに羞恥心が上昇して一気に耳まで赤くなった。直ぐにでも脚を閉じてしまいたい衝動に駆られつつ、ジョゼフの言いつけを破ったら怒られると思って何とか踏みとどまる。そんな私を見透かしたように、ジョゼフがうんと頷いて私の頭を撫でた。
「いい子いい子」
その優しい声と手の平の感触にときめいて苦しくなる。普段だったら間違いなく嬉しいと喜ぶのに。今日は状況が状況なだけあって少し複雑な気分だ。「じゃあ、触るからね」そう、不意にジョゼフの長い指が下着越しのソコに触れてピクリと反応してしまう。実質まだ指が添えられただけ。様子を見るように、焦れったく上下に行き来しているだけなのに、それがジョゼフの指だと思うだけで私に快楽を与えるから堪らない。まるで甘い電流が流れているみたくビリビリと痺れて、思わず口から吐息が溢れた。
「っは、ぁ…」
自然と身体中から力が抜けていく。気がつくとジョゼフに凭れ掛かる形になっており、その頃には私のそこも段々と湿り気を帯び始めていてジョゼフの指の動きも早くなっていた。時折敏感な所をカリカリと引っ掻くから。その度にビクビクと跳ねて眉根が寄る。浅く呼吸を繰り返しながら、溢れそうになる喘ぎ声を止めようと唇を噛み締め手の平でそっと押さえた。けれどそれを許さないとばかりに、ジョゼフが下着の端から指を滑り込ませてゆっくり挿入し始める。
「っ!ん、!ふあ、」
突然の刺激に耐えかねてつい声が漏れた。不意にジョゼフが喉の奥で笑って、一気に意識が現実へと引き戻される。ああ、ジョゼフに、見られている。ジョゼフの指で弄られてみっともなく反応する様を、すぐ後ろで見られているのに。そう思うとどうにも堪らなくなって、けれどその背徳感すら快楽の材料になるからもう頭の中も身体中もグチャグチャだった。恥ずかし過ぎて涙が出てくる。ゆっくりと指を抜き差ししながら、ジョゼフがぴっとり私に身を寄せるなりわざとらしく耳元で囁いた。
「ふふ、気持ちいかい?やらしいね、もうこんなにトロトロにしてさ」
艶っぽい声でそんな意地悪を言われたら、嫌でもナカがきゅっと締まってしまう。それはきっとジョゼフにも分かってしまった筈で、私は涙目になりながら「だっ、て、」と力なく返事をした。
「うん?」
「ジョゼフの事が、好きだから。んっ、だから自分でもビックリする程、か、感じちゃって」
ジョゼフじゃなかったらきっと、こんな風になってないもん。かああ、と顔を赤くする私を見て感化されたのか、ジョゼフが一瞬ポカンとしてからじわじわと頬を赤らめる。
「……そう」
長い間を置いて漸く、ジョゼフが短く言葉を落とした。それと同時に中の指がくっと折り曲げられて身体が飛び跳ねる。指が増やされてバラバラに動き出したのに、私は身悶えてギュウとキツく目を瞑った。
「っあ!?や、ダメっ…!んっ、んんっ!」
ジョゼフの指が良い所を突いてきて快楽の波が押し寄せる。咄嗟に脚を閉じようとするけれど、ジョゼフの空いてる方の手で制されてしまい失敗に終わった。「あっ!はぅ、じょぜ、ふぅ、ああっ!」身体を仰け反らせながらジョゼフの方へと倒れこむ。身体の奥の方からキュンっと甘く痺れるような感覚が全身に巡って、弾けた。そのままグッタリ脱力して大きく息を吸い込むと、ジョゼフが私の顔を覗き込んできて目が合う。う、恥ずかしい。もうどんな顔をしたらいいのかも分からず、羞恥心で泣きそうになっているとジョゼフがゆうるりと微笑んでそっと私の頬を撫ぜた。
「本当はもっと苛め抜いて、焦らすつもりだったのになぁ」
「えっ、…え?」
「あんな可愛い事を言われてしまったらねぇ?」
さぁどうする。どちらか一方とは言わず、このまま二人でグズグズに溶け合ってみないかいと。もう条件をクリアして私は用済みの筈なのに、ジョゼフは私を放そうとはしないので一瞬呼吸が止まる。いつも透き通っていて綺麗だと思っていたアクアブルーの瞳が、今だけはギラギラと私を見据えていた。
20190727