短編

□嘘の果てに辿り着いた言葉
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 久々に会った武は、包帯をしていて、眼帯までしていた。

「何が……あった、の?」
 その痛々しい姿で、無邪気に笑う彼の顔は。
 とても、とても奇妙だった。
「ん?何がだ?」
 本気で言っているのか、はぐらかしているのか分からない彼のセリフ。
 そして、取り敢えずあがらせてくんね?と、私に言う。
 そこで気づく。
 ここが、私の家の玄関先だったことに。
 慌てて武を招き入れて、お茶を出す。
 そして、改めて聞く。はぐらかされないように。

「その怪我、どうしたの?」

 それに武は、苦笑いをして困ったような顔をする。
 言いたく、ないのだと覚る。
 というか、覚らざるを得ない顔、という顔をされてしまう。そんな顔をされれば、聞くに聞けないのを、知ってるくせに。
「ちょっと、ドジ踏んじまって、さ」
 嘘。
 もしかしたら、ホントにドジを踏んだだけなのかもしれないけど。
 でも、あんな顔をするってことは、嘘なんでしょう?
 心の中で、武に語りかける。
 聞いたって、答えてくれないのは目に見えてるから。
 だから、今度は別の質問をしてみる。
 答えてくれないのは、分かってるけど。

「ここ最近、学校に来てないよね?
 何、してるの?」

 ゴメンね、言いたくないことを聞いて。
 でも、でもね。
 そんな顔はしないでほしいよ。
 そんな、嘘を吐くことに罪悪感を抱いている顔は。
 嘘を吐くなら、せめて顔に出さないでいて?

「あー、ちょっと体調悪くてな」

「……そっか」

 苦々しい想いをしながら、私は相づちを打つ。
 そして、私達の間に沈黙が降りた。
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