そよ風の子守歌〜SS〜
□フロルvsオウカ
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〜アゲトビレッジ〜
とある昼下がり、俺とフロルは久しぶりにこの村に来ていた。
それにはまあ、理由があって……
「オウカ、いるかなぁ?」
「いると思うけどな。あんまり村の外には出ないみたいだから」
「今日こそは特訓の成果を出さなくちゃ!」
手をギュッと握りしめ、気合いを入れるフロル。
数週間前
『私、少しでも強くなりたいの。コウ、お願い。私にバトルを教えて?』
と俺に頼み込んできた。
別に、頼られるのは嫌いじゃないから、毎日一緒に特訓をしていた。
その成果を見るために、アゲトビレッジでは二番目に強いと言われてる(一番はレオさん)バトルバカのオウカと一勝負しようという事になった。
「と言っても、俺はオウカの家は知らないからなぁ……片っ端から探すしか――」
「……ぃ」
「……何か今、声が聞こえなかった?」
「え?」
微かに誰かを呼ぶ声が聞こえ、フロルに尋ねてみても、頭にハテナマークを浮かべているだけだった。
「おーい、コーウー!!」
「――げふっ!」
背後からドドドドッと盛大な音が聞こえてきたかと思ったら、
次の瞬間には背中に重い一撃を受け、思いっきり吹き飛び顔面スライディング。
(い、今一瞬意識飛んだ……)
内心で冷や汗を流しながら、起き上がって犯人へと振り返る。
「……何するのさ、オウカ」
「えっ?何って、飛び蹴り」
桜色の髪を揺らし、何事も無かったかのようにあっさりと言い放つその人は……
まさしくオウカ。
「……何で俺限定で飛び蹴りかましてくるのかなあ?」
「そりゃあ、コウだしいいかな〜って思って」
「…………」
「それに、ストレス解消になるしねっ☆」
珍しくルンルン気分なオウカだが、
(……俺ってそんな扱いなの?)
物凄く理不尽な気がする。
ていうか俺、会う度に飛び蹴り食らわないといけないのか……?
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