そよ風の子守歌
□港町の情報屋
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〜翌日〜
「コウ、調子どう?」
「うん、薬のお陰でもう大丈夫だよ」
「よかったぁ」
元気そうなコウを見て、フロルはホッと息をついた。
昨日まで酷かった熱も、すっかり治まっていた。
「元気になって何よりだよ。看病していたのがフロルちゃんじゃなくて悪かったね」
一瞬の間。
「――な、何言ってるんですかクレインさんっ!?」
その言葉の意味を理解し、我に返って顔を赤くして恥ずかしそうに叫ぶ。
「え?だってコウ君、フロルちゃんのこと、好きなんでしょ?」
「……そうだったの、コウ兄?」
「〜〜っ!」
満面の笑みで指摘され、さらにリュウトからも好奇の眼差しを受けて、赤かった顔をさらに真っ赤にして顔を逸らした。
が、ふとある事に気付き、クレインに視線を戻す。
「……クレインさん、そのこと誰から聞いたんですか?」
(絶対、絶対にあいつしかいない)
フロルとレオン達しか知らないはずなのに、クレインは知っていた。
フロルが言うはずないし、レオン達の声はコウしか分からない。
しかし、コウにはその事実を知っていそうな人物に心当たりがあった。
「ん?レン君から聞いたんだけど?」
「……やっぱり」
(知り合いだったのか……)
心当たりが確信に変わり、さらにクレインと知り合いだった事に驚いた。
次の瞬間には笑顔を作ったが、
(わぁ、怒ってる……)
目が笑っていなかった。
「……フロル、レンに会いに行くよ」
会って直接文句を言うために、外に停めているバイクの元へと向かう。
「あっコウ、待って!」
置いて行かれるのは堪らないので、慌ててコウの後を追った。
「所長。レンって、ONBSの代表のレンさん?」
「違うよ、アイオポートに住んでる普通の男の子だよ?」
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