そよ風の子守歌
□頂上での奪還
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〜バトル山〜
伝説のポケモン・ホウオウの住まう地として伝えられているこの山は、オーレ地方でのトレーナー修行の地として有名だ。
が、いつもの雰囲気から一転、不穏な空気に包まれていた。
「……一歩遅かったみたいだね」
「シャドーの目的が分からない以上、急がないと」
アイオポートでレンと合流し、全速力でバイクを走らせてきたが、少し遅かった。
入り口前の広場には、いつも多くの人々がいるのだが、今は一人もいない。
「早く中へ……っ!」
フロルの一声で、一斉に入り口へと向かって走った。
***
開放された扉の手前で止まり、慎重に中の様子を伺う。
「お前ら全員動くなよっ!変な動きをした奴は痛い思いをするぞ!!」
中では、シャドーの戦闘員が、受付嬢やトレーナー達に向けて、怒鳴りながらナイフを振り回していた。
「……ここには二人だけだね」
「どうする?力尽くで叩きのめしちゃう?」
ニコッと笑いながらそんなことを言ってのけるレンが恐ろしい。
「とりあえず、俺が合図出すから、一気に攻めよう。フロルは待機」
「了解」
「うん」
スッと目を閉じて念じれば、片方の戦闘員の手が燃えた。
「う、うわぁああ!?手が、手があ!!」
「おい、大丈夫か!?」
いきなりの事で気が動転し、手を振り回し、もう一人が駆け寄った。
「――今だ」
隙の見せた戦闘員へと、コウとレンが一気に駆け出す。
サッと懐に入り、鳩尾に拳を叩き込んだ。
二人の戦闘員はなす術もなく、そのまま気を失った。
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