青春真っ盛りなボクたち

□on your mark-オンユアマーク-
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(要視点)


うわぁ〜、マジだりぃ〜・・・。


「今宵も校舎をつつむ闇の中に、一輪の花が咲く・・・」


暗闇の中でアホの声が響いた。


「なぜならそれが、私の名の由来だから!」


トイレットペーパーを片手に担いで赤いスカートを穿いた小ザルが言った。


「トイレの花子さん イン 文化祭!!」


うわっ、かつらの黒髪ストレートのおかっぱが妙に似合ってんぞ。


「ふっ超メジャーどころの花子さんですら自分のものにしてしまうオレの魅力は無限だぜ」

「おっと千鶴くん。有名どころでいったらこちらも負けてませんよ」


ざっと奥から現れたのは、鬼太郎姿の祐希。


「なんだゆっきーそれ!かっけー!」

「あとこれに目玉の父さんがいたら完璧なんですけどね」

「目玉!?オイこら!今日の目玉はこの花子ちゃんでしょーが!NO.1の座はだてにもわたさないんだから!!」

「いやそうじゃなくてうちの父さん本格的に目なんで・・・」

「だっってぇな、もうすぐ電気消えんだからちったぁおとなしく・・・」


騒がしいと思ってたら、祐希がぶつかってきて、思わず振り向く。
と、小ザルと二人腹を抱えやがった。


「だはははははははは!要っちが!!要っちがーーー!!」

「ぷっ」

「わっ笑ってんじゃねぇよ!誰のせいでこんなかっこしてると思ってんだ!」


オレは受付っつったのに、こいつらのせいで・・・


「でもちょっとおいしいでしょ?」

「おいしくねぇ!!」


オレの格好といえば長い黒髪に死に装束。


・・・どこがおいしいんだよ?!


ふっと浮かぶあいつの顔。

うわっ、見せたくねぇぇ〜・・・。
でも悠太たちと来るって言ってたしな。

受付だったらまだマシだったのに!!


軽い恨みからばしっと小ザルを叩いたら、小ザルのヅラがズレた。


「きゃーっずれたぁーっ何すんのよ痛いじゃない!」

「あぁ花子さん。髪は女の命ですぞ。早く早く」

「見てるこっちもいてぇから。もう何だよ、この集まり・・・」


呆れた目で見ていれば、ぱっと電気が消える。


「ほれ、位置につくぞ」

「「おぉー!!」」

「もう叫ぶなアホ!!」


もう一度殴って、オレたちは暗闇の中、位置に付いた。

作り物の墓の陰から、通路の様子を伺う。

一組目がやってきた。


「お、さっそく客が入ってきたみたいだぞ」

「えっどこどこ!?」

「や〜ん、こわ〜い…っ」

「ってうおーーーい!カップル客かよ!」


小ザルが逆切れする。
そのまま床にへたり込んで愚痴りだした。


「けっあんなんムシだムシ!ラブイベントにオレたちを利用しようなどと、片腹いたいわ!ぺっぺっ」

「やれやれ・・・こちとら恋のキューピッドじゃないから。あくまでおばけだから」

「いや、おばけならおどかせよ」


そうは言ったけど、オレもやる気がうせて、その場に座っていた。

ちょっとやつらが羨ましいと思ったのは秘密だ。







































(春視点)


ボクは暗闇の中を、悠太くんの背中に縋りながら歩いていた。


「う〜〜〜〜暗くてよく見えないよ〜〜〜」

「はいはい。ちゃんと歩いて、大丈夫だから」

「そうそう!作り物だよ?」

「あはは・・・」


笑顔をくれる暁ちゃんに苦笑で返す。

いつもなら和む笑顔なんですけどね。


ボクこういうの苦手なんですよ?


「春先輩、大丈夫っすか?」

「な、なんとか・・・」


光輝くんも心配してくれて、しっかりしなきゃと思うんだけど・・・。


「わっ♪」

「ひゃ?!」

「・・・暁、やめなさい」


び、吃驚した〜〜〜!


突然背後から声がしたと思ったら暁ちゃんだった。


「ひっひどいです!」

「だって、春ちゃん可愛いんだもん!」

「うぅ〜〜〜」


可愛いって・・・

暁ちゃんに言われても嬉しくないですよ。

そう項垂れてたら、裾をちょんちょんと引っ張られた。
その方向を向くと茉咲ちゃん。


「ごっごめんね春ちゃん!私も一緒に来ちゃって」

「いえ、おばけやしきは大勢の方が心強いですから」

「そうそう!それに、光輝も付いてきてるからいいんだよ」

「暗に邪魔って言ってるよね、それ」

「えー悠太違うよ!」


あははと笑う暁ちゃんの声にちょっとずつ怖さが抜けてきた時だった。


「あ、悠太だ」


祐希くんの声がして、振り向く。
と。


「わ゛ーーーーっっ」

「祐希くんの生首ーーーっっ」


振り向いた先には祐希くんの生首。しかもそれが近づいてきた。


「わ゛ーーーーっっっ」


どんっ


思わず走って逃げたところで誰かにぶつかる。


「あ、すいまっ!!…「ばーーーっ花子さんだぞーーーっっ」

「わ゛ーーーっっ花子さんだーーーっっ」


他の幽霊に当たって、逆に逃げる。


「おいだめだって、こっちは逆そ・・・」

「わ゛ーーーーっっ要くんだーーーーーっっ」

「・・・」

「・・・」

「・・・今のリアクションの意味をきかせてもらおうか?ああ゛?」

「い、いえ、あの・・・」


思わず出てしまった言葉に口を噤む。

ふ、深い意味はないんですよ〜〜〜っ!

でもそのおかげで少し落ち着いて、見ると祐希くんはちゃんと胴体がある。
花子さんも千鶴くんで、安心した。


「なんでちゃんちゃんこ着てないの?」

「こっちのがより闇と一体化できるかなって」

「祐希頭いい〜♪」

「まぁね。暁よりは大分」

「ひっどっ!!悠太〜」

「お前らここで止まんな。後ろつっかえっから」

「あ、はい」


暁ちゃんが悠太くんにぎゅっとしがみついてるのを見たら、なんだかちょっと胸が切なくなった気がした。

要くんに促されて我に返り、出口に向かう。


「あーオレも行くー」

「祐希、おばけやんないの?」

「花子も行くーっ」

「おめーらはおばけだろが!」

「花子は幽霊である前に一人の女なのよ!」

「知らねぇよ!!」


歩き出したら、祐希くんと千鶴くんも付いてきて、ただ、暁ちゃんが要くんのほうに寄ってったのが見えた。


要くんは一人で残るらしい。


・・・暁ちゃんは多分、それを寂しく思って残ったんだろうな。


それすらもやっぱり、胸を切なくした。

 
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