青春真っ盛りなボクたち

□on your mark-オンユアマーク-
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(茉咲視点)


「メリー怖くても途中で泣くなよ?」


バカにされてむっとする。


「ばっ・・・かじゃない!?こ、このくらいのおばけやしき、おもしろくてつまんないくらいよ!」

「おーおー」


悔しくて強がってみたけど、ごとーんと何かが落ちてきた。


「きゃーーーーっっ」


逃げようと思えば今度はたくさんの手に足をつかまれる。


「きゃーーーーーーーーっっっ」


(うぇ〜ん!暗いし怖いしもうやだ〜〜〜〜っ)


「ばーーーっ」

「きゃーーーーーーっっっ」


半泣きになりかけたとき、ぎゅぅっと誰かにしがみついてしまった。
はっとする。
すぐに手を離そうとしたけど。


「茉咲ちゃん、大丈夫ですか?」

「っ?!う、うんっ大丈夫・・・」


頭の上から春ちゃんの声がした。


(どどどどど、どうしよう。思わず春ちゃんの手にぎっちゃった)


内心すっごいどきどきしながら、暗闇を歩く。


「あ、あれ出口かな」

「う〜〜〜〜早く明るいところに出たいよ〜〜〜」

(で、でも春ちゃん、いやがってないみたいだし。い、いいわよね。大丈夫よねっ)


自分に言い聞かせて、手をしっかりと握った。


《頑張ってね》


今日誘ってくれた暁ちゃんの言葉がよぎる。


(わ、私、頑張ったよ!!)


心の中でちょっとガッツポーズする。

と、出口が見えた。


「はー。やっと外に出れたー。怖かったですね。茉咲ちゃん」

「う、うん。でも楽しかっ・・・た・・・」


途中で言葉が切れたのが分かる。

だ、だって。

だって・・・。




「きゃーーーーーーーっっ!」





私は大声を上げて、頬を殴った。

だって。

春ちゃんだと思ってたのに、つないでたのは。


「い、いった・・・!!何?!なんで今オレはたかれた?!」


千鶴、だった。


「なななななに私の手ぇにぎってんのよ、あんた!ヘンタイ!セクハラ!」

「はぁ?!タコぬかしてんじゃねぇぞ!おめーが勝手ににぎってきたんだろが!!」


恥ずかしさのあまり顔が真っ赤になる。

勘違いしてたなんて、ホント恥ずかしい。


「あっあんたの手ってわかってたらしないわよ!」


恥ずかしくなってくるっと背を向ける。


もう!トキメキ損よーっ


































(千鶴視点)


(か・・・っわいくね・・・!!)


殴られた頬を押さえたまま、メリーの後姿、握られていた手を見た。


(・・・っだよ。せっかくちょっと・・・)


・・・



・・・



・・・



・・・



・・・



・・・




つながれていた手をじーっと見る。
そのあと隣でケータイで記念撮影しちゃってるゆうたんとゆっきーに問いかけてみた。


「ちょっと・・・何?」

「何って・・・何が」

「え?」

「ん?」

「・・・何言ってんの、君たち」

「っつーか、アネキは?」

「「あ」」

「・・・暁ちゃんなら、要くんのところに残りましたよ」

「うわっ、オレ迎えに行ってきます」

「あ、オレも」


光輝の一言で話題がそれて、ゆっきーとゆうたんはまたおばけやしきの中に戻っていく。

光輝はメリーと同じクラスだからか、急いでメリーの後を追いかけて行って。

・・・わだかまりの残ったオレと、切なげにおばけやしきをみる春ちゃんだけが残った。
































(暁視点)


「はーだり・・・」

「要って意外と長髪似合うよね。髪伸ばせば?」


そういって、ウィッグである髪をさらっと撫でる。
と、真っ赤な顔になって手を叩かれた。

そういえば。


「・・・要最近よく顔赤くするね」

「はっ?!・・・な、なんでもねーよ」

「りんご病?」


そう首をかしげて聞いたら、あたしをチラ見した要がさらに赤くなる。

・・・もしかして。


「要」

「あ?なんだ・・っ?!」


呼んでこっちを向かせて、両手で頬を包む。
そのまま顔を近づけて、額と額を当ててみた。


う〜ん・・・


「なっなっ…!!」

「熱は、ないよね・・・最近忙しくて疲れちゃったのかと思った。風邪じゃなくてよかったね!!」


ホントに心配した。

だから風邪じゃないことがなんか、嬉しくて。

思わず笑顔を向けたら、ぷいっとそっぽを向かれてしまった。


・・・なんかしたかな?


「・・・っ」

「・・・」

「・・・っっ」

「・・・要の担当時間っていつ終わるの?」

「っ!あ?えっと・・・」


ちょっと沈黙が入っちゃって、気まずくなって話題を振った。


「もうすぐ・・・だったと思う」

「そっか」

「やーーーーっ」

「ちょっとおねえちゃんさけびすぎだから」


話してたら客の声がした。


「来たね」

「っつかお前なんでここにいんだよ。今更だけど」

「ホント今更」

「はいはい。う〜〜〜ら〜〜〜〜め〜〜〜し〜〜〜・・・」


要がしゃがんでた体を起こして、通路にでたときだった。

声が、とまった。


「??」


なんだろうと思って、あたしも通路にでる。


「え?」

「え?暁ちゃん?」


そこにいたのは、


「日紗子ちゃん!!」


と、お姉さんだった。










「あははははははは」


日紗子ちゃんの笑い声が廊下に響いた。


「何そのかっこ!も、さいっこーだからあんた!」

「ね。要意外と似合うよね♪」

「ちょー似合ってんじゃん!」

「るっせぇな。いつまでも笑ってんじゃねぇよ日紗子!暁も!」


要が照れたようにそっぽを向きながら、吐いた。


すっごく、照れてる。


だってわかるよ。お姉さんと目ぇ合わせようとしないもん。

それがぎゅぅっと痛いのは、気のせいだ。


「要くん似合うね〜〜」

「似合わねぇから!つか、なんでいきなり来んだよ・・・っ」


ごしごしと、口の端につけていた赤いインクを落とす要。

そのあとにばさっと鬘を取った。


「あ、何。とっちゃうの?」

「るせーな。いんだよ。もうすぐオレの担当時間終わるし」


イラッとしたように言うけど、それすら照れ隠しだろ!要くん!!


「かなっ・・・」

「暁見つけた」


声を発しようとしたら、後ろからの声に遮られた。

振り向けば悠太と祐希。


「どったの?」

「もうすぐ時間だから、迎えに来ました」

「あ、そっか!!」


悠太の説明に、そういえばと思い出し、悠太に駆け寄る。


「んじゃ、日紗子ちゃんにお姉さん!バイバイ!!お店来てね〜♪」

「行けたら行くねー」


そのままくるりと背を向けて、悠太の手を握った。

そんでその手を引っ張るように走った。


なんか最近あたし変だ!!

うまく笑えてたかな?


そういう心配をしながらも、一つ、真っ黒い渦が胸の中にあるのを、あたしはわざと考えないようにした。



(・・・よかった。来てくれて。

正直あそこには、いたくなかったよ。)



そんな、黒い渦。



 
 
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