青春真っ盛りなボクたち

□on your mark-オンユアマーク-
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(悠太視点)


暁を見つけた瞬間、体が強張った。
要を見る目が、前と少し違っていたから。

見ていられなくて声をかけて、暁をつれてクラスにもどる。

祐希は祐希で自分のクラスに戻って行った。

祐希が戻る前に、オレに言った言葉。


《悠太、気づくの遅いよ》


ちょっと怒ったようなその言葉は、何を示してるのか。

双子なのに、わからない。

小さい頃はもう少し分かったんだけどな。



「悠太〜これ着なきゃだめなの?」



ちょっと物思いに耽ってたら、暁が泣き言を言いながら、渡されたらしき服を見せてきた。

赤いチェックのタキシードに、大きな白いうさぎ耳。
それからダテの小さなメガネに、大きな肩掛けバック。
ちなみに肩掛けバックは丸い形をしていて、懐中時計のプリントがされている。
まさしく。


「・・・着なきゃダメでしょ」

「白兎・・・どうせならアリスになりたかった」

「アリスじゃ男装にならないでしょ」

「だって、こんな赤いスーツなんてやだ!」


まぁ、当日にそんなこといってももうムリだけどね。

不思議の国のアリスの白兎。


・・・オレよりはマシだと思うんですが。


そう思って言ってみた。


「オレの白雪姫よりはマシじゃないですか」

「えー?!悠太似合ってるよ!きれい。悠太が女の子で、あたしが男の子だったら絶対悠太好きになるもん!!」


・・・そうですか。

じゃぁ今は?


その疑問は怖くて口に出来なかったけど、でも誉められたことだしいいかな。

・・・あんま嬉しくないけど。女装が似合うって。


「暁ちゃん!悠太くん!時間ですよ〜」

「あ、春ちゃん。まだあたし着替えてない」

「急いでください!あと1分で交代時間です!」

「は〜い」


春が来て言うと、さっきまでだだこねてた暁もちゃんということを聞いて、更衣室に入っていった。
その後姿を見つめると、隣に春が立って、春も天川の後姿を見て。


「・・・暁ちゃんって、好きな人、とかいるんですかね・・・」

「・・・どうだろう」


核心を突くような問い掛け。
まだ、その答えをオレは知らない。


「いつも笑っててほしいんです」

「・・・そだね」


いつもの花の飛ぶような笑顔じゃなくて、少し困ったような、苦笑い。


・・・こんなとこにもいましたか、伏兵。


祐希、こっちにも気づいてるのかな。

どっちでもいいかな。
選ぶのは暁だし。


「でも、最後に決めてくれるのは暁ちゃんですから、ボクたちはゆっくりやっていけばいいんですよね」

「ん」

「・・・みんな暁ちゃんが大好きだって、暁ちゃん、いつか気づいてくれますかね」

「どうだろ」


いつものような顔に戻った春に、オレも考えるのをやめた。

春の言ったとおり、決めるのは暁で、気づくのも暁。


まぁ、色々と気づく前に、先手を打っておきますか。

ちょっと心に決めました。




















 








(暁視点)


「にょほーい!ゆーうたんっしゅーんちゃんっあっきーー!!」

「あ、千鶴くん祐希くん。遊びに来てくれたんですか?」


花子姿の千鶴と、鬼太郎姿の祐希が2年5組にやってきた。

くっそ〜〜〜〜、見られたくないよ;

あたしはそろっと陰に隠れる。


「ふたりともか〜〜〜わ〜〜〜い〜〜〜い〜〜〜」

「そ、そうですか?」

「悠太きれー」

「・・・あれ?暁は?」

「あそこ。」


影で会話を聞いていたら、悠太が指差してきた。っておい!なにナチュラルにばらしてるの?!

あたしは仕方なくみんなのもとに行った。

ふわふわのウサギ耳に、小さな丸めがね。懐中時計のプリントのななめかけバック。


・・・不思議の国の白兎・・・


「わぁ〜あっきーは白兎かぁ〜!かわいいね!!」

「暁・・・」


あたしの方を見た祐希が声を出す。


「かわいいじゃん。ウサギ耳」

「そ?」

「うん。かわいー。追いかけて捕まえて閉じ込めたくなるくらい」

「祐希がアリスって・・・微妙だね」

「・・・意味を理解しましょうよ、暁」


悠太のつっこみによくわからないなぁと首をかしげて、あれっと気付く。


「要は?」

「「っ!」」

「・・・」

「要なんか知らないよ」


聞いた瞬間、悠太と祐希が眉をひそめて、春ちゃんが苦笑した。
そのあと祐希がぷいっと素っ気無く(しかも怒気を持たせて)言うもんだから、あたしはさらに???と首をかしげた。


・・・傾げすぎて痛いじゃない!まったく。


そこに千鶴が春ちゃんを見てあっと言った。


「これ赤ずきんちゃん?」

「はい」

「千鶴も赤ずきんちゃん知ってるんだ?」

「まっ!あっきーオレっちのことバカにしてる?!」

「うん」

「っていうかさ・・・なんか春ちゃんだと、オオカミに食べられちゃうっていうのが急に生々しく思えてくるねっ」

「「はい?」」


オオカミ?生々しく?

はて、どういう意味だ?

おバカの発想はおばかにしか分からないかね??

と、近くにいた祐希がそれをみて仕事中(喫茶店)の悠太に言う。


「しらゆたひめも気をつけないと、ホラ。執念深い人が毒りんごもって殺しに来ちゃうかもよ?」

「いや、訪問販売は基本門前払いだから。話すらきかないから」

「ぶはっ!」

「・・・意外にしっかりしてるんですね。もっとこー箱入り娘かと・・・」

「あたり前だよ。だてに一国の姫やってないよ」

「あはははは♪」


なりきってる悠太に笑みがこぼれる。
っていっても、こんな一国の姫とかかっこよすぎだからね。


「悠太みたいな姫にだったら、あたし王子様になりたいかも」

「じゃぁなってよ」

「へ?」

「王子様」

「へ?」


スッと手を取られる。

ありゃ?悠太どうしたんだろ?

いつになく真剣そうな真顔だ。

そのまま悠太があたしの手を上から引っ張るように持ち上げていって・・・。


ちゅ


「・・・」

「・・・?」


悠太の手の甲があたしの唇に触れた。

よく、姫の手を王子がとって手の甲にキスってあるけど、そんな感じ。

実際は悠太に押し付けられてるだけだし、あたしは屈んでないからちょっと不思議な光景だけど。


・・・


「王子様の口付け」

「・・・へへっ♪しらゆたひめのためなら」

「・・・悠太、なにしてんの??」


悠太が手を離して笑った。
あたしも笑い返す。
そしたら祐希のちょっと低い声。


・・・さっきから祐希怒ってんのかな?


心配になって声をかけようとしたとき、オーダーが入ってしまって、仕方なくその場から離れる。


「ボク、ジュースもってきますから、みんな席に座っててください」

「うん」


春ちゃんの言葉に、他の人は席に付いたのだった。



あたしは仕事仕事♪
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