青春真っ盛りなボクたち
□on your mark-オンユアマーク-
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(悠太視点)
・・・ちょっと積極的に動いてみたけど、あんな程度じゃ伝わらないかな。
そう反省して、とりあえず仕事放棄。
祐希の隣についていく。
と、祐希が言う。
「悠太、あれはずるいよ」
「・・・動かないとダメって思うようになったんで」
「二人で守るって言ったじゃん」
「でも誰かに取られるんだったら、オレ自分のものにしたい」
「・・・じゃぁオレも動くからね」
「いいよ。これからちゃんとしたライバルだから」
宣誓して二人で暁の姿に目を移した。
せっせとジュースを運ぶ姿が可愛い。
少し焦ったようすと、気に入ったのかチラチラと懐中時計のプリントのバックを見る姿は、はっきり言って白兎そのものだと思う。
そんでそれがきっちりと暁にはまるのがすごいと思う。
すごく、可愛いと。
「あり?」
千鶴の声がした。
その方向を見ると、あぁ茉咲ね。
「メリーだ。なーにやってんだお前」
「ずっとここでセリフの練習してるんだよ。茉咲のクラスシンデレラの劇やるんだって」
「へぇーメリー何やんの?」
「・・・ねずみ役」
「ぷーーーーっっサイズぴったり!」
「何がおかしいのよ!」
千鶴がばかにして、茉咲がそれに怒鳴る。
いつものことだと、また視線を暁に戻した、ら。
「ねぇ、うさぎさーん!一緒に校舎回らない?」
「えっと・・・仕事中なのですいません!」
「そーいわないで行こう?」
男女の集団に詰め寄られてた。
やれやれ・・・
あきれながらも、暁を助けようとそっちに向かう。
と、男の一人がぐいっと暁をひっぱって廊下に出て行った。
えっ、ちょっと。
遠い位置だったためにダッとかけだして、廊下に出る。
出かけて、立ち止まる。
「悪い。こいつオレの連れなんだ」
「・・・チッ」
「ばいばーいうさぎちゃん!」
「あ、はい。また暇なときでも」
「お前なー・・・ムリヤリ連れてかれそうになって、なにが‘また’だ、このバカー!!」
「な、バカって言うな!バ要!!」
「お前だって言ってんだろーが!」
・・・なんだ。要が助けちゃった。
言い合ってる姿とか、見たくなくて。
オレはすぐに祐希たちのもとに戻った。
オレってホントに臆病者。
(千鶴視点)
メリーに声をかけたらすぐにゆうたんがどっかに行った。
それでもなんとなくメリーが気になって、冷やかしてみたらツンっと澄まされた。
「ふんっ言っとくけどねぇ。私もうセリフかんぺき・・・い・・・っ」
澄ましながら台本をめくったメリーが、咄嗟に顔を歪めた。
「おおお、なんだどした?紙で指切ったか」
痛そうなメリーに寄る。
ふーふーと傷口に息を吹きかけてるメリー。
「んっとにドジだなぁ、お前は。ホレ、保健室行くぞ!バンソコまいてやるかぶへっっ」
やるからと言おうとして言えなかった。
春ちゃんがこっちに来たから。
メリーがそれに気付いて、オレに蹴りを入れたから。
ってか、いってぇぇえええーーーー!!!
オレはノックダウン。
女の命な黒髪(かつら)まで取れちまったぜ、こんチキショー!!
ダウンしてたらゆっきーとゆうたんがオレの背中を突く。
あら、ゆうたんおかえり、なんて言う気力もねぇよ。
「どっどうしたんですか?」
「なんあんでもないの。なんでも。ドジなんかしてないの」
心配してくれた春ちゃんにメリーが言った。
オレはまだ倒れてる。
「佐藤!委員長が呼んでるぞ・・・金髪なにしてんだ?」
「光輝!じゃ、春ちゃん。私そろそろ劇の準備しに行かないといけなくてね・・・っごちそうさまでした」
「あ、いえいえ。がんばってくださいね。劇ぜったい見に行きますよ」
「・・・ほ、ほんと?」
「はい」
光輝にゲシッと蹴られたために起き上がったオレに見えたのは、ホントに嬉しそうに笑うメリーだった。
メリーと光輝が教室を出て行く。
「・・・」
オレはさっきのメリーの顔真似をする。
ぱぁっと輝く笑顔。
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
「じゃねーーーー!!!」
持っていたお盆を怒りで叩きつける。
「んだよ、メリーのやつほんっとかわいくねぇなぁ!オレバンソコまいてやろうとしただけじゃん!」
「千鶴くん・・・」
「も、ぜってー心配してやんねぇ!!」
「あはは・・・」
きーきー言ってるオレに春ちゃんは苦笑して返す。
「でもなつかしいな。ボクもはじめて茉咲ちゃんに会った時、おこられたっけ」
「え?」
「バンソコあげようとしたら、よけいなお世話ーってどなられて、逃げられちゃって」
春ちゃんの話に驚く。
今のメリーの春ちゃんに対する態度からじゃ、考えられん!!
「春ちゃんでもそんなことが?!ほんっとアレだな!あいつは人の親切を・・・」
思わずぐちったら、春ちゃんが慌てて否定した。
「あ、でも追いかけてもっかい渡したら、ちゃんともらってくれましたから」
「え、追いかけてって・・・」
「あ、えーと・・・しつこかったです・・・よね」
「・・・あーいや、いんでない?」
コップをくわえながら、オレは呆けた。
んで、考えた。
(やーすごいね。ふつうぜったいそこで追いかけられないよね。だってさぁ・・・)
そこまでいって、気付いた。
だから、
(だから春ちゃんなのかな・・・)
「千鶴」
「!お、おう?」
いきなりゆっきーに声をかけられて戸惑う。
「劇見に行く前に着がえた方がいいねって」
「おうおうっ」
席を立つ。
見ると後ろにはもういつものメンバーがいた。あ、要っちはいないや。
「あっ」
「どしたの?」
春ちゃんの声に、オレたちは走った。