青春真っ盛りなボクたち

□on your mark-オンユアマーク-
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「いっいたぁーーーーーっっ」

「要く〜〜〜〜んっ」

「要っち〜〜〜〜!」

「!!?」


要の後姿を見つけて叫ぶ。


あ、要の前には日紗子ちゃんたちもいる・・・


ちょっとずきっとした胸をスルーして、要に近づいた。


「もっも〜、どこ行ってたんですか〜〜」

「いやお前らも、以前の姿はどこいったの?なんだそのかっこ・・・」

「あはは、ナイス突っ込み」


肩で息をしながらチラッとメンバーをみた。

千鶴は花子さん、祐希は鬼太郎。
悠太は白雪姫で、春ちゃんは赤ずきんちゃん、あたしが白兎。


・・・コスプレ集団ですね。はい。


「着替えてる時間なくてさ」

「要くんにまっ茉咲ちゃんの劇見に行こうって言ってなかったから、むかえに・・・っ」

「はぁ?んなの勝手に行けばいいだろ。お前一人行けば十分だっつの」

「まぁ確かにそーなんだけどね?」


要の言葉に軽く同意。

すると春ちゃんがきっと要を見て言った。


「何言ってるんですか!茉咲ちゃん練習がんばったのにその成果をボク一人にしか見てもらえなかったら、きっとがっかりしますよ!」

「いや、お前の鈍感っぷりにがっかりだろうよ」

「あははは!」

「あーだめ。もうホントに着替えてる時間ない」

「ええ゛!?」


悠太が携帯を見て言った。
と、要の体を千鶴と祐希が抱え込む。


「しゃーねぇ!このまま直行じゃー!」

「ちょっオイやめろって!オレ今あいつらと・・・」

「ごめんね、要くん。お友達と約束あったんだね」

「バイバーイ」

「ちげーよ!!」


暴れる要。でも。


‘あいつらと’


日紗子ちゃんとお姉さんのことだよね。

優先順位がそっちなことにショックを受けたのを、またあたしはスルーした。

こんなマイナスな感情に、気付きたくはないよ。




















(茉咲視点)


(ひと、ひと、ひと)

ぱくっ


心臓がどきどき言ってて、だから手のひらにひとを3回書いて飲み込んだ。

ねずみの衣装を着ながら、幕の横に立つ。


(春ちゃんが見に来る!がっがんばんなきゃ!)

「佐藤」

「わっ!?こ、光輝、なによ?」

「・・・お互いがんばろうなってだけ!」

「・・・っ!・・・ま、暁ちゃんに馬鹿にされないようにね」


にこっと笑う光輝に憎まれ口を言いながら舞台を見る。

ちなみに光輝もねずみ役。

暁ちゃんに見に来るように言ったとも言ってた。

だから、私と境遇が似てるのよね。
さっきもひと書いて飲んでた。緊張してるんだ。

それでも私を励ましてくれるのは優しいところだよね。
暁ちゃんとくっつくといいなぁとちょっと思った。


「はい、ねずみ役、出てください」


裏方の声に一歩足を出す。


(あ〜〜〜どうしよう。緊張してきた・・・っ)


さっきの光輝への憎まれ口でいくらか和らいだ緊張がまた戻ってくる。

どきどきしながら、チラッと客席を見た。


(ででも、大丈夫よ。お客さんたくさんいるから、春ちゃんがどこにいるかなんて・・・)


そう言い聞かせるつもりだった。が。


客席の中央に、コスプレをした異様な集団発見。

右から鬼太郎に白兎に白雪姫に・・・赤ずきんちゃんの春ちゃん・・・


(すごいわかるーーーーーーー!!!!!)


春ちゃんを確認したとたん心臓がさらに早くなった。


ばっくばっく


ばっくばっく


目はぐるぐるぐるぐる


「佐藤!」

「っ!」


小さい光輝の声にはっとした。


(そうだ私のセリフ・・・!!)


「か、かわいそうにシンレレラッ今日もいっ・・・・・・ままははとっおねえさまに今日もいじめられたん・・・だね・・・」


ずーんっと頭が真っ白になった。


(おもっきしかんだーーーーーーー)











そのまま舞台を降りて、廊下に出た。


「茉咲ちゃん」

「!!」


声に振り向けば、春ちゃんといつもの人たち。


「おつかれさまでした。劇すごくおもしろかっ・・・」


びゅ


春ちゃんが笑顔で言う横を走ってすり抜ける。


だって恥ずかしい。


セリフ、間違えちゃったんだもん。


「佐藤!!」

「まっ茉咲ちゃん?!」

「あ、おいっ」

「茉咲ちゃん!!」


後ろから光輝の声に続いて、春ちゃんと要と暁ちゃんの声がした。
それでも私は振り返らず、猛スピードで逃げた。




 
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