青春真っ盛りなボクたち

□きょう、あした、あさって。
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「で?」


昼休みの図書室の机で、要がめんどくさそうに声をあげた。


「なんでこういう展開になってんだよ」

「愛しい人の手に渡らぬまま、暗やみの中でずっと一人ぼっちだったこの切ないラブレター!」

「なんか千鶴が言うと切なさ半減・・・」

「今こそオレたちが届けてやろうではないか!」

「それでなんで過去の卒業アルバム見てんだ・・・ハローページ見ろ、ハローページ」


なんでも春ちゃんと千鶴が見つけたラブレターが種で。


「いや〜〜〜だってせっかくだから、かなこさんの顔見てみたいじゃん」

「おもっくそお前の事情じゃねぇか」


まぁ、そういうこと。

あたしたちは過去のアルバムを開き、眺めていた。


「ずっと机の中にってことはあれかな。書いたはいいけどけっきょく渡せずそのままっていう感じだったのかな」

「えー?木村くんが自分の机に入ってるの気づかなかったんじゃない?」

「どれだけ鈍感なんだよ」

「なんか置き勉しまくってて、奥にどんどん沈んでいった・・・みたいなね」

「あー、あるかもね」

「ねーだろ」


パラパラっと次々にページをめくっていく。

かなこさんは見当たらない。


「けっこう前の手紙なんだろうね。封筒とかちょっと古くなってたし」

「ね」

「っていうか、こんなのよりアニメージャ見たい・・・」

「祐希いつも読んでるじゃん」

「もう習慣付いちゃって・・・」

「付けなくていいから」


ぽわっとしながらまたパラパラ・・・。
図書室だと、あんまり騒げないねぇ〜。
あぁ〜ヒマだ。


「きっとラブレターって何度も書き直すんでしょうねー」

「んーていうか、手紙にしろなんにしろ、あんまりストレートに伝えると逆に相手がたじろいじゃったりしそうだよね」

「あーね。もう暗号にするしかないね。そりゃ」

「ね」

「それ相手が相当読解力ある人じゃないと伝わらないじゃないですか・・・」

「めがねくんみたいなね」

「そう。だから全国のめがねくんにモテ期到来だよね」

「そうそう。ラブレターが要に山ほど積まれるんだよ・・・」

「だって!やったね要っち!めがねひとすじに生きてきたかいがあったね!」

「うるせぇよ」


あら、要くんの顔が少し怖いです。
そんなじゃモテませんよ・・・。


そう思いながらも、ほっとしてるような感じがあるのは気のせいだと思う。


と、千鶴が顎に手を当てて妙に輝かせながら語りだした。


「ま、ロマンチッカーちーさんが考える最高の告白はあれかなっ」

「どれかな?」

「あっきー・・・突っ込まないで!」

「だってなんか悪寒が・・・」

「オレが考えるのは、星たちが見てる夜空の下で彼女を抱きしめながら、耳元で自作のラブソングかなっ」


ぞわわわわっっ


背筋に凄まじい悪寒が走った。
要もビクッと背筋を伸ばしちゃってる。
あたしも悪寒が酷くて、机に伏せた。


「・・・」

「おっ前へたすりゃ告白で人殺せんじゃねーの・・・?暁なんか、想像だけで死んでるし・・・」

「おいおいホメすぎホメすぎ!恋のスナイパーは言いすぎ!」

「言ってねぇよ・・・」

「暁大丈夫?」

「悠太・・・ダメ・・・」

「あっきーもオレにメロメロ?」

「千鶴くんちょっと黙ってください」


悠太に擦り寄って悪寒を治める。


・・・はぁ・・・やばかった。


悠太の腰に巻きつきながらうーんと唸ると、今度は春ちゃんが照れたように言った。


「あっ両手いっぱいの花束かかえて告白とかは・・・もう古いですかね」

「んー、古いっていうかなかなか聞かないよね。今も昔も」


悠太の鋭い突っ込み。
それでもそれを想像したら、千鶴の時の悪寒がきっちり治った。(←おい!!

いや、和むわ。それ。


「春ちゃん可愛い〜」

「え、や、嬉しくないですよ」

「春ちゃんになら、花束抱えて告白したい」

「えっ?!いや、ボクがしますよ!」

「わっ!嬉しい♪」

「春ダメだよ。暁は花粉症で花には近寄れないから」

「ちょ、花粉症関係な・・・」

「そうなんですか!じゃぁ・・・」


ちょっと盛り上がったところで、悠太に止められる。


っていうか、あたし花粉症じゃない!!


「まぁどんな告白でもありだよ」

「っ」


祐希が今度は語りだした。

っていうか、あの祐希が!祐希が!!



「ほら、オレたちの年頃って、恋に恋してる初々しい感じがウリなわけでしょ?」

「ウリとか言っちゃうと初々しさゼロなんですけど・・・」


・・・祐希は所詮祐希だった!!


「あ」

「どしたい?祐希」

「もしかしてかなこさん?!かなこさん見つけた?!」


また祐希が声を上げる。
悠太からのそのそ離れて、祐希の横に駆け寄った。

アルバムを覗き込む。


「これって・・・」

「・・・」

「・・・東先生だぁ」

「「ええええーーーー!!?」」


ぼそりと呟いたら、わいわいとみんな寄ってきた。
みんなでアルバムを囲む。


「わ〜〜っほんとにここの卒業生だったんですね〜っ」

「めがねしてないね」

「つかなんだこれ!すげぇかっこいんですけど!」

「ね!すごいかっこいい!!」


ほへぇ〜とみんなで眺める。

いや、なんか先生の若い頃ってすごい。


「あ、見て。こっちスナップ写真みたい」


悠太の言葉に視線を動かすと、カメラに向かってピースしてる東先生が。


「いやーんっ」

「千鶴気色悪いよ」

「なっ?!でもそう言いたくなっちゃうじゃん!東先生がピースしてんだもん!!」

「まぁ、分かるけどさ」

「暁分かるんだ」

「わかっちゃうんだ」

「こりゃもう千鶴との同類化かなり進行してるね」

「ちょっ?!やだ!」

「君たちほんっと、オレが嫌いなの?!」


ぎゃーぎゃー言う千鶴をほっといて、スナップ写真に目を戻す。
っと、東先生の腕にまきついてるなにかに目がいった。


「「「ちっさ!!!」」」

「え、なんか東先生に小動物がまきついてるんだけど・・・何これ・・・」

「うん・・・しかもなんだろ。この見覚えのある無邪気じゃない無邪気な笑顔・・・」


祐希と悠太の言葉に、頭を捻る。

極最近のこと・・・


「ああーーー!!」

「どした暁」

「黒髪チョコバナナ!!」

「あーーーー!!」

「言われてみれば」


正体がわかった。
千鶴も思い出したらしい。
いきなりキレだした。


「んだよあいつ!散々人の身長いじりしといて、てめーが一番豆なんじゃねぇかよ!!」

「千鶴チビチビ言われてたもんね」

「言われてねぇーよ!」

「身長っていっきにのびるものなんですね・・・」

「成長っていうか、これはもう進化に近いよね」

「・・・悠太って何気失礼だよね」


そう言いながらも、悠太にまた抱きつく。

祐希がちらりとこっちを見た気がしたけど、気のせいだよね?


「なんか思わぬタイミングで東先生のレアショットを見てしまった、ね」

「あ?そーか?・・・」


気のせいだったらしく、祐希がため息混じりにそう言った。

ポンっと、要の肩を叩いて。


「・・・」


要が固まって、考えてる。

そして思考が決まると、祐希を見ながら言った。


「・・・オイ、お前今タッチしただろ」

「は?してないよ・・・」

「うそこけ。お前が意味なくオレの肩に手ぇおくわけねぇだろが」


それちょっと自虐思考。

そんなツッコミを心の中でした。


「んなの長い人生、一度くらいおくことだってあるでしょうに・・・」


祐希はあくまで白を切るつもりらしい。
が、要がポンッと祐希にタッチを返すと。


「だからタッチしてないって」

「じゃなんで返すんだよ!」


二人でタッチしあいだす。
そろっとその場を離れようとすれば、要と目が合った。


「ホラよっと」

「わっ!要ひどい!悠太ぁ〜」

「暁・・・抱きつきまぎれにタッチしたでしょ」

「って、ゆうたん!それをオレにさりげなく渡すのやめて!!」


またまたタッチゲーム開始。

タッチ!タッチ!タッチ!タッチ!タッチ!


・・・なんか目ぇまわってきた。


「もーーーっっせっかく忘れてたのに、なんでまた再開するんですかーーーっっ」


春ちゃんの声は聞こえるけど、他の人が止まらないんで止まれません!(←責任転嫁


と、千鶴がばっと距離をとった。
うわ、嫌な予感。


「ぬぅっしぶといやつらめ!こうなったらまとめて息の根をとめてくれるわ!どらぁーーーっ!!」

「いでぇ!!」


千鶴が叫びながら突っ込んできた。

ささっと、あたしと悠太と祐希は避ける。

避けきれなかった要の唸り声。
それと同時に。


―がたーーーん ばしゃーーーっ


「「「「「「・・・・・・」」」」」」



要が倒れた勢い余って、花瓶が倒れた。

花瓶の下には資料やらなんやらがぐっしょり・・・。



・・・流石千鶴さん、やってくれます。


 
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