青春真っ盛りなボクたち

□三日月シルエット
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「外食って・・・食堂じゃねぇか、ここ・・・」

「外食っていうか、内食だよね!屋上のほうが外食だったんじゃない?」

「あっきーはー、細かいこと言わないの!!にゃ〜っいいによい〜っ」

「そういえばボクら一度も食堂でごはん食べたことないですね」

「わはーい!あこがれの食堂デビューだーい!!」

「何たのもっかなー」


千鶴に連れられてやってきたのは、校舎内にある食堂だった。

こんなとこあったんだ・・・

ドキドキしてるあたしは、キョロキョロしながら祐希たちについて行く。
と、後ろを歩いてた春ちゃんが言った。


「あっあの、要くんのお祝いは・・・」

「あー・・・」

「延期ってことで!学食、学食・・・♪」

「暁もう目が学食しか映ってないよ・・・」


即答したら祐希に言われたけど、だって憧れの学食!!(←千鶴化


「だそうです。また日をあらためて・・・」

「永久的にな。」

「要、お祝いしてほしいなんて図々しいよ?」

「頼んでねーよ」


後ろを振り向いて言うとバシッと叩かれた。

・・・まぁお祝いついでに、このことはお咎めなしにしてあげるよーだ!!

食券売機にいる千鶴たちの元に駆ける。


「安っうどん250円て!」

「へー思ってたよりけっこうメニューあるね」

「うおーっし!ここのメニュー全部制覇してやるぜーっっ」

「あたしもやる!!」

「「エイエイオーーー!!」」


千鶴と二人で気合を入れてると、悠太が言った。


「いや、制覇はきびしいよ。日替わり定食が立ちはだかるよ」

「あー毎日メニュー違うもんね。あれ」

「えっそんなの毎日来ないといけないじゃん!」

「今日という日は2度とこないよ?!」

「そうだよ。エンドレスだよ。エンドレス」

「うおーっかるがるしく制覇なんてくちにできねぇぜ」

「食堂手強しー!隊長!!どうしましょー!!」

「うーん・・・なにか手を打たねば」


券売機の前で腕を組んで考える。

・・・食堂のおばちゃんを脅すとか?

でも日替わり定食・・・なんか豪華そうだから取り消してほしくないぞ!


うーん・・・


考えていると、要が割って入ってきた。


「遅ぇよお前ら、どけ。オレ先に注文すっから」


ずいっと割り込む要に、あたしと千鶴がキレた。


「させるかーっ!!」

「なっ?!」


どがーっとタックルした千鶴。
倒れた要を二人で睨んだ。


「なんでも一番になれると思うなよ!要なんて最後でいいんだー!!」

「いっつもオレらのこと上から見下ろしてしゃべりやがって!」

「それおめーらがチビだからだろが!!」

「一番に注文するのはこのちづ・・・「あたしだー!!」グフッ!」


要に文句を言った後、抜け駆けした千鶴に制裁を加えた。


「ぐっ・・・裏切るのか。あっきー隊員・・・」

「先に裏切ったのはそっちですよ。千鶴隊長。いえ!最早隊長なんてお呼びできません!!」

「君たち、なにがしたいの?」


倒れた千鶴を見下ろして言い捨てれば、悠太の呟きが聞こえた気がした。
でもあたしはそれを流してふっと笑う。


「千鶴・・・お前の負けだ!・・・おばちゃん、カレーうど・・・「ふえっくしょん」なっ?!」


キラーンッとかっこつけようとしたら、突風に食券が舞った。
犯人は。


「祐希!」

「ごめんごめん。今ちょっとカゼひいてて。えーと、きつねうどん大盛。」

「大盛?!」

「超健康じゃん!!」

「くっそーーー」


こうして、食堂一番対決は、祐希の勝利。

・・・っていつから始まったのか知らないけど。


「ズルゆっきーめ・・・ん?」


千鶴が恨めしそうに祐希を見ながら、(いろんな意味で)散ってしまったあたしの券を拾ってくれた。
と、何かに気づく。


「ぜっ、全員集合ーーーっっ」

「どしたい?」


小声で叫んだ千鶴にささっと近づく。
気づいた春ちゃんたちも寄ってきた。


「どうしたんですか?」

「食堂でシンデレラが働いてんだよ!早くっ」

「は?」


千鶴が台の上にひょこっと顔を出す。
あたしたちもこそこそと顔を出した。


「・・・わー・・・」


見えたのは、給食の白衣に身を包んだ、きれいな女の人。


「ほんとだ。きれいな人ですね」

「きれーーー!!」

「ね!?ね!?」

「あれ?」

「ん?・・・あれ・・・ゆっきーは?」


見惚れてると、祐希がいないことに気づいた。
千鶴も気づき、声をかける。


「ゆっきー!ゆっきーも見てホラ!」

「え?あーうん」

「もーっちゃんと見てよ!」

「見た見た」


言いながらも明らかに見てない祐希。
千鶴がぷくっと膨れた。


「んだよもー。食いつき悪いなー」

「まぁあんなもんだから。祐希くんの周囲への感心なんて」

「ねー。まぁあたしたちに優しいからいいんだけどね」


悠太が春ちゃんの髪をくるくるいじりながら言った。
あたしもそれに乗ってから、祐希の元に向かう。


「あーのー・・・」

「はいよっ」

「オレきつねうどん頼んだと思ったんですかど・・・」

「えっ!?あらやだ。おばちゃんてっきり・・・っごめんねぇ」

「どしたい?」


祐希に近づくと、食堂のおばちゃんがてんぷらにあぶらあげを乗せていた。


「きらいじゃなかったらこの天ぷらも食べちゃってね」

「え、でも・・・」

「あーいいなぁ!」

「・・・お姉ちゃんもサービス!」


ポツリと漏れてしまった言葉に、おばちゃんは笑ってあぶらあげをあたしにもくれた。


「あ、ありがとうございます!!」


嬉しくて、すっごく笑みがこぼれちゃう。

と、祐希や悠太の動きが固まった気がした。
ありゃ?春ちゃんと要もだ。

おばちゃんが手を伸ばしてきた。


「かわいいねー!娘にしたいくらいだよ!!」

「ひゃぁ?!」


ぎゅうっと腕に頭を抱かれた。
台越しだから少し苦しいけど、あぁ温かいなぁ・・・って。


「暁・・・」


そう思ってたら祐希にぐいっと腕を引かれた。
おばさんから離される。
一瞬呆けたおばさんは、その後すぐ笑って。


「あらやだ、彼女だったのかしら?うふっ大丈夫よ。おばちゃんにそういう趣味はないから」

「はぁ・・・あの・・・天ぷら・・・」

「いいのいいの!おばちゃんからの愛だと思って、軽く受け取って」

「「ぶっ」」


おばちゃんの言葉に、傍観していた二人が吹いた。


(よけい軽く受け取れない・・・)

「よかったね!祐希!」

「ここにマダムキラーがいるーっみんなはなれてーっ」


言うけど祐希は軽く青ざめてて、どうしたんだろ?

後ろで騒ぐ千鶴の言葉が、あんまりよくわからなかった。


 
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