青春真っ盛りなボクたち
□三日月シルエット
3ページ/8ページ
「っはー」
満足そうな千鶴のため息に笑みがこぼれる。
「あったかいごはんにきれいなシンデレラ。いいもんだねぇ。食堂ってのは」
「ね!目の保養・・・」
「屋上そろそろ寒いし。しばらく食堂で食べる?」
「いいですねそれ」
「えー・・・」
「ここにえーとか言ってるやつがいんぞー」
要の言葉に祐希を見た。
「祐希寒いの苦手でしょ?なんでー?」
「なんでって・・・悠太ー」
言うと悠太の腕を引っ張って移動した。
「暁が毎回あんな風に笑ってたら、学校中に暁が狙われちゃうじゃん」
「あー・・・まぁ大丈夫でしょ」
祐希の言葉に悠太はさらっと流して、みんなの元に戻った。
残された祐希はムスッとしながらでもと、続けた。
「オレ今シール集めてんだよね。コンビニの」
「シール?」
祐希が制服のポケットから紙を出した。
「今コンビニでやっててね。パンとかおにぎりとかお弁当についてるシールを30点集めると絵皿がもらえんの」
「あーあれですか」
「えー?!いいな!いいな!!」
「今何点なの?」
「・・・9」
「んだよ。まだ半分もいってねぇじゃねぇか」
祐希の言葉に要が呆れたように言う。
と祐希がぷくっと膨れた。
「だから?自分はテストの折り返し地点お祝いしてもらったからって。上から見ちゃって」
「してもらってねぇよ。あれのどこがだ」
「だから毎日食堂になったらシール集まんないじゃん」
「そっかー・・・」
うーん・・・と考えると、悠太が言った。
「じゃぁ祐希はコンビニのごはん持参して来れば?」
「だってそんなのみんなが学食食べてるの見たら、絶対そっち食べたくなるじゃん・・・」
「・・・」
「祐希わがままだぞー?・・・分かるけどさー!!」
「はいはい!」
うーんとまた唸ると、今度は千鶴が叫んだ。
「じゃあさじゃあさっシール当番制にしたらよくね?!」
「なるほど!!」
千鶴の言葉にあたしもガタッと立ち上がった。
「千鶴あったまいいー!」
「へっへーちー様にはこんなこと、朝飯前よ!」
「シール当番制ってなに?」
「「へ?」」
祐希の疑問に、首をかしげる。
・・・こんなこともわからないのかい?(キラーン)
「説明しよう!あのね!コンビニのごはん食べる人を日替わりで変えるの!」
「そっ!そいでシールはゆっきーにあげんの!」
「あーなるほど。・・・っていうか暁、説明なしに分かっちゃったんだ・・・」
「分かっちゃったんだね・・・」
「え?!な、なんで?!」
悠太と祐希が泣きまねっぽく目に手を当ててそういった。
って、なんか憐れんでるよね?!な、なんで?!!
「はぁー・・・勢いだけでやめろよ、そういう・・・」
「えーっなんでおまけしてくれないのー?」
ため息をつく要の言葉を遮って、千鶴よりでかい下品な声が聞こえてきた。
みんな固まって、そっちを見る。(祐希以外)
「・・・うちはおまけ受け付けてないので」
「えーうそだよーしてたよ。だってオレ見たもん。天ぷらとあぶらあげ両方もらってるヤツー」
見るとあのシンデレラさんが、二人の男子生徒に言い寄られていた。
「・・・もしかしなくてもあれかな。祐希のうどんが波紋投じちゃってるのかな」
「シンデレラピンチ!」
「おい、お前助けに行ってこいよ。説明するなりなんなりして」
「え?」
無関心な祐希に、千鶴が言った。
「えじゃねぇ、早く行け!シンデレラってのはいじめられても何も言えない、かよわき女の子なんだよ!!そして」
ぐいっと腕まくりをした千鶴が駆けた。
って、えぇ?!
「白馬の王子の登場を、今か今かと待っているんだよ!」
「ってお前が行くのかよ!!」
駆けた千鶴の背を見送る。
う〜ん・・・白馬の王子っていうより・・・金髪の猿?
「ねーねーお願いってば〜オレたち育ち盛りなんだよ〜〜〜」
「・・・・・・」
「あ、じゃあさ、おまけしてくれたら、今度映画に・・・」
「しつこい」
「・・・え?」
いまだまとわりついてる男子高生に、きつい一言が飛んだ。
見ていたあたしたちもビックリ。
「おまけの一つ二つでさわいでるボクちゃんたちと映画?」
シンデレラが男子高生たちを向いた。
そこには儚いシンデレラっていうより、かっこいく笑う女の人。
「女誘うなら、自分で稼げるようになってからにするのね」