青春真っ盛りなボクたち

□colorless blue-カラーレスブルー-
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(祐希視点)

お昼が終わって食堂から出るとき。


「だいたいなんでオレにはオファーがないのだ!」

「ねぇだろ・・・」

「でも千鶴って結構体力だけはありそうなのにね。いつも騒ぎまくって」

「だけはって、あっきーどういう意味よ?!」

「あっちょっとちょっとちょっと」


ぞろぞろとみんなが出てく中、声がして振り向く。
暁も振り向いたのがわかった。

見た先にはシンデレラさん。

手招きされてそっちに行く。
暁は動かなかった。

シールのシートを手に、シンデレラさんは口を開いた。


「私のシールあげるわ。2周目突入ーって思ってまた集めてたんだけど、時間的にムリそうだし」

「はぁ・・・どうも」


かりかりとシートからシールを剥がすシンデレラさん。


「・・・・・・シールそれだけですか?少な・・・」

「だけってことないでしょう。ビンボー学生だったらもうけもんでしょ?」

「!」


思ったことを言ったら、呆れた声とともに腕を引っ張られた。
手の甲にシールを貼ってくる。


「はいっと。はいっと」

「・・・・・・」



掴まれた手首。


後ろを通る男子。



「っ」

「・・・?」



なぜか聞こえた、息を飲む声と小さな足音。


そっちを見れば、暁の背中が見えた。

まだ、いたんだ。

それから手首の熱に気づいて、見られてたと気づく。


「は・・・」

「・・・・・・」


ぱっと、手を引っ込めた。


「何、いらないの?ぜいたくもんが」

「・・・・・・・・・・・・・・いえ・・・・・・・・・いりますけど・・・」

「花代ーっまた生徒さんたち入ってきたよーっ」

「はーい」


声をかけられて、シンデレラさんはそっちに向かった。


触れられた手の甲とか手首とか。


少し熱い。


拭うように、オレはセーターの裾に押し当てた。

台に張られた残りのシールは、やっぱりはねてた。






























家に帰って、部屋で漫画を読む。


「今日のご飯なにかなー?」

「暁、ちゃんと戸締りしてきた?」

「・・・忘れたかも!見てくる」

「いってらっしゃい」


暁はいつも、夕飯をオレんちで食べる。

暁と悠太が話してて、でもオレはそこに入れない。
漫画を読んでるつもりなのに、なんとなく、昼に掴まれてた手首に目が行く。

・・・出て行った暁の背に、昼間の暁が重なった。

暁はなにを思って、あの場を見ていたんだろう。
暁はあのことを、なにも言ってこなかった。


 
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