きみとぼくらのぼーだーらいん
□サボり場は屋上!
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誰が決めたか、四月は出会いの季節らしい。
それから、始まりの季節。
――高校生活、三回目の春を迎えた。
今日の空は快晴。
桜も新学期に合わせたように満開。
…これはお花見日和だな。
なんて、登校早々考えてたからか。
「よっちんー!!」
「どわっ!?なにや、」
「どーんっ」
「うおあっ!」
「ちょっおおお?!」
―どしゃっ
背中に二度の衝撃を食らった。
そのおかげで、耐えきれず地面と元気よく挨拶するはめになる。
ちなみにコンクリなんだけど。頭から行ったんだけど。…あーあ。
「おいこらゆっきー!なんで押すんだよ!!」
「……」
「あれ?遥大丈…」
「っざけんな!ガキ共!!」
「うごっ!!」
「っ!!」
一瞬の隙を付くようにガバリと起き上がる。
そのついでに反動を利用して、背中にいた猿には頭突き、後ろに突っ立っていたアホ面には拳を食らわせてやった。もちろん鳩尾にガチで。
「いっつ……っ」
「いってぇーーー!!なにすんだよよっちん!!」
「それはこっちのセリフだボケが!朝っぱらから背中に飛びつく男子高校生があるかっつーの!」
お陰で若干腰が鳴いたからな!ゴキッって言ったからな!
「…ちょっと。だったらオレは関係ないじゃないですか」
「いやおいてめーその後ろからかるーく押してくれたよな?あ?」
明らかに狙ったタイミングだったぞあれは。
千鶴の勢いで前傾姿勢になってたから、最小限の力だっただろうけど。さらりとした無表情がホント腹立つ。
「いやいや、あれは千鶴をかるーく押しただけで」
「千鶴の前にオレ居たの気付いてたよな?!」
「いや、見えなかったよ。遥、背低いから」
「はあ?!昆虫よりはでけーよ!!」
「よっちん!どさくさにまぎれてなに言ってんの!!」
「いや、触角が隠してたって」
「ゆっきーまで!?」
ぎゃーぎゃー騒ぐ千鶴は置いといて、とりあえずむかつくから祐希にもう一発。さけられた。ちっ。
「うわ…お前ら朝からなに騒いでんだよ」
と、祐希に更にもう一発、と構えたところで別の声がした。
振り向けば眼鏡の学年主席がこっちに向かってくる。…ってかあいつ今うわ…って言ったぞ。気持ちわかるけど。
「いいんちょーじゃん。おっす」
「要っち!はよーっっと!」
「って!!小猿はいちいち飛び掛かってくんな!!」
「いってーーー!!」
案の定というか、千鶴は塚原に同じことをして怒られた。阿呆だと思う。
暫く二人が言い合った後、千鶴を引き剥がした塚原が、ズレた眼鏡を直しながら言った。
「っつか、早く学校向かえよお前ら。遅刻すんぞ」
流石いいんちょー。
仕方なしにオレも、祐希に向けていた拳を下げて、足を動かす。祐希も並んで歩きだした。
祐希を見て、ふと疑問が湧いた。
「…っつか今更だが、浅羽は?」
「オレですけど」
「…わかりきってること聞いてくんじゃねーよ」
ばしっと軽く叩く。今度はあたった。ナイスオレ。
「いったー…暴力反対ー」
「兄は?」
じと目で見てくるのをスルーして、顔も見ずに続ければ、祐希が諦めたようにため息をついた。…慣れたもんだな。
「先行ってると、思う」
「曖昧だな」
「…起きたらいなかった」
「置いてかれたのか」
「ちーがうよ。ちょっと歩幅が合ってないだけで」
「んなばかな。双子だろ」
「いや、双子でも歩幅までは合いませんよ」
そうこうしてるうちに学校到着。
下駄箱に向かおうとして、ああそういえばと全員足を止めた。
「昇降口変わったんだな。学年上がったから」
「だなー。っつーことはあっちか」
「オレたちもついに!最上級生ですなー!この勢いで学校の頂点になっちゃう?!」
「千鶴のその勢いは勉強の頂点目指すために使ってください」
「それはほら、眼鏡ないから無理!」
「眼鏡のおかげで主席ってわけじゃねーから」
隣の会話を聞きつつ、三年の入り口を見る。
うじゃうじゃと人だかりが、ドアの前にあった。…あ。
「ってか三年ってことは、クラス替えかー」
「あー。うん」
「クラス替えかー!みんな同じクラスだといいな!」
「え、ごめんオレ動物園で授業は受けたくねえ」
「オレもー。小猿の檻で勉強とか騒がしすぎるだろ」
「ちょっと二人とも!?どういう意味か説明してくださる?!」
「っていうか、遥は進級してるかも怪しいんじゃ」
「大丈夫。名前なかったら適当に書き足す」
「全然大丈夫じゃねーよ。自信もって進級してるって言えよ」
「いや、あー…うん。たぶん」
「…こえよ阿呆」
「あ!あれじゃね?クラス分けの表!」
人だかりに寄れば、扉に紙が貼ってあった。たぶんクラス表。
確認しようと更に近付こうとして、その前に見慣れた二人組発見。
二人もこっちに気付き、寄ってくる。
「あ!要くん、遥くん、祐希くん、千鶴くん!おはようございます」
「おはよう」
「おお」
「はよー春ちゃんゆうたん!」
「はよ」
「おっす」
春がにこにことオレの方にくる。やけに嬉しそう。
なんとなく言われることが予想できて、オレはそっと笑った。
「遥くん!今年、ボクたち同じクラスですよ!」
「そっか。よろしくな」
「はい!」
癒しだなーこの笑顔は。
なんて客観的に思いつつ見てれば、その笑顔は方向を変えた。…祐希と千鶴に。
それと同時にちょっと嫌な予感。
うきうきとクラス表を確認しようとした千鶴に、春は笑顔で言った。
「千鶴くんと、祐希くんも一緒です!」
「え、ちょ、春ちゃん!そういうのは自分で確認する楽しみが!!」
らんらんとしてた表情が、くわっと振り向いてまた騒ぎ出した。
祐希も便乗するように春に寄っていく。
あー。やっぱりか。
「はあ…(千鶴はネタバレとか嫌なタイプなんだなーやっぱり。春止めてやればよかった)」
「…うるさそうだけど、まあがんばって」
「あ?」
「ため息、吐いてたから」
「あー……いや、まあ」
隣に来た浅羽が、無表情でだけど優しく言った。思わず苦笑に変わるオレ。
…ため息、でてたのか。
「…べつに、嫌いじゃねーよ」
「そー?」
「ああ」
今年一年が、楽しみだなって。
感慨に浸ってただけだ。
…お前らといられる、残り一年。
サボり場は屋上!
(近日封鎖予定)
(その後はまあ、思い出づくりってな)
――――――――――
三年生編。
たまに原作沿いつつ。