青春真っ盛りなボクたち
□三日月シルエット
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「「ぱんぱかぱんぱんぱーんっあんぱーんっ」」
「・・・・・・」
千鶴とあたしがふたり、あんぱんを要の目の前で掲げた。(素敵効果音つきで)
というのに、当の要は数秒後。
「は?」
「・・・もっと反応してよ!!」
「いや、わけわかんねーから」
胡散臭そうな目をあたしたちに向けた。
って、ひどくないですか?!
千鶴が要の横にどかっと座る。
「ちょっときいたよ?要っちー。あなた1年の時からずっと定期テスト一番らしいじゃない。ん?」
「あー・・・で?」
「こないだの2学期の中間テストあったでしょ。で、単純計算するとちょうどそこがテストでいう高校生活の折り返し地点なんだよね」
「つまり、卒業までのあと半分のテストも、この調子でがんばってねっていうお祝いなの、これは」
「お前ががんばれ、赤点ザル」
「要、嬉しいでしょ?」
あたしも千鶴と反対側の要の隣に座って、要の手にあんぱんを乗せた。
「嬉しい?ねぇ嬉しい?」
「べっつにヒマつぶしにこういうことされてもな」
「きゃーっやーっだ、バレてる!」
「ヒマってバレてるー!」
要の言葉に、あたしと千鶴は悠太たちの方に駆けた。
まぁそういうことです。
ただの、ヒマつぶしです。←
「お祝いとか迷惑でしたか」
「いや迷惑っつーか、あんぱんはねぇよなっていう・・・」
「うわ、ひっど・・・一人一人がなけなしの20円をはたいて買ったあんぱんなのに」
「そうだ!そうだ!高校生のお財布にとって、20円はばかにならんのだよ?!」
「この事実を知ってその態度か!!オレたちのやさしさにあやまれー!!」
「お前らこそヒマつぶしってバレた上でその態度か。えらそうなんだよ」
ぎゃーぎゃーいつものように要が怒った。
なんだよ、せっかくお祝いしてあげてんのに!!
ひょいっと千鶴が要の手から、あんぱんを奪う。
「こんなヤツほっといて、もうオレたちで食べちゃおーぜーっ」
「賛成ー!」
「賛成ーじゃねぇよ。はじめから食う気満々だっただろうが!」
「あたり前じゃん。オレたちのお金なんだから」
「ちょ、ちょっと・・・っ」
パンの袋を破って、パンを取り出した。
四等分にして、祐希・悠太・千鶴・あたしで食べる。
と、春ちゃんの分がないことに気づく。
・・・あたし半分しか食ってないし。よし!
「もーっだめですよ、みんな。ちゃんと要くんの・・・」
「春ちゃんあーん!」
「え?あ、あーん?・・・!!」
戸惑いながらもあーんってした春ちゃんに、パンをぽいっとあげた。
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「あれ?みんな?」
千鶴にかかっていた要までもが、停止。
「・・・えっと・・・」
「ありゃ?春ちゃん顔真っ赤だよ?」
「・・・ゆうたん、ゆっきー。ちゃんとあっきーのしつけしなさいよ」
「ね。オレたち以外には、そんなことしちゃだめだって、教えないと」
「いや、お前らもいいわけじゃねーから」
「あら、要さんヤキモチですか」
「違うわ!!」
「・・・??」
こそこそと話す悠太たちに、あたしは首をかしげた。
と、千鶴がゆらり・・・と立ち上がる。
「・・・えっと・・・!まぁ、気を取り直して要っち!そこまで祝ってもらいたいってんなら」
「何も言ってねぇよ。オレは」
「男として動かねぇわけにいかねぇ」
「だから、何も言ってねぇって」
要を無視して、千鶴は左手の親指をくいっと自分に向けてかっこつけて言った。
「それじゃお前ら。今日のランチは、リッチに外食といこうか」