BL

□悲しみの向こう側
1ページ/1ページ

「君は・・・・」


10年前のあの日より古くなった黒曜ランド。
僕は彼を、本物の彼を最後に見た3階の元映画館に来ていた。

「ここに、いた・・・?」


クローム・髑髏が見つかった場所だから彼がいるかと思い、やって来た。
しかし人の気配がないことに気づき、床に転がる石を蹴っては寂しさを紛らわせていた。

「・・・・約束したのに」


そう呟き、左手の薬指を見つめた。
銀色に輝く、シンプルな飾りのついた指輪。
何度か幻覚として来たときにもらった。




『この指輪あげます』

『いいの?・・・・高そう』

『約束、しますね』

『え・・?』

『僕は必ず本当の姿で、君のもとへ帰ります』

『・・・うん』

『だから・・・・』

『・・・・・?』

『待っててください』





そのときの顔は忘れられない。
まっすぐ僕を見つめる、強い意志をこめた、
それでいてどこか悲しそうな・・・。

「ずっと・・・・待ってるよ?」


手をあげて天井を仰ぐ。
輝く無機質な指輪はまるで僕のようで。
目に溜まる涙をこらえながら、遠い地にいる君に言うように言葉を紡いだ。


「ねえ・・・・・骸・・・」


力なく手を下ろし、彼の温もりを探すように自分の体を抱きしめ、蹲った。


「いつまで待ってたらいいの・・・・?」


こらえきれなかった涙が頬を伝う。
嗚咽をもらしながら肩を震わす。
顔を両手で覆い膝をついて泣いた。

「おね、がい・・・・」

あとからあとから溢れてくる涙を手で拭う。

















「早く、・・・・っ迎えに・・・きて・・」

















悲しみの向こう側

君が待ってたら、いいのに

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ