ワンだふる・でいず

□4
1ページ/7ページ



夏樹と靖友が住んでいるのは4LDKの一戸建てで、箱根の海が近いところに庭付き土地付きの物件である。そしてここ、夏樹が一括で買った家でもある。
彼女は若干25歳であるが小説家になってからもう9年になる。16歳のころから多くの出版社のコンテストで大賞をとりまくり、賞金を荒稼ぎしていた。18歳になれば出版社の争奪戦が始まったくらいだ。すでに大賞をとったいくつかの作品は副賞で書籍化して印税はもとよりあった夏樹は職業を小説家にしてから恐ろしいスピードで作品を書き上げた。数年で箱根に一戸建てを買えるほどになった。しかも彼女は若いころから作品を書き、見た目も悪くない。話題性もある。
未だ売れっ子で何作もの連載をもつ夏樹は知名度が高い。


「靖友、今日はお客さんがくるよ」

『へぇ』

「デザイナーらしいよ」

『でざいなー?何それ』

「なんか私のファンらしくてね」


うきうきとしている彼女はお湯を沸かしたりとなかなか忙しない。
聞くにそのデザイナーとは夏樹が贔屓にしている旅館の跡継ぎの友人なのだという。イギリスでそこそこ有名なブランドデザイナーらしいと笑う彼女は珍しくミーハー心を出している。
テーブルに昨日作っておいたチーズタルトとティーカップを置いた。そして靖友が好きなかぼちゃのクッキーも置く。その匂いに靖友がぶんぶんと尻尾を振る。


 
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ