ワンだふる・でいず

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『おお!靖友!』

『誰だよ、お前』

『ははっ、やっぱ口悪いなおめさん』

『うっぜ!つかほんとに誰ェ?』


夏樹の帰宅と同時に入ってきたのは体格のいいゴールデンレトリバーだった。狼犬は体躯の大きな犬種だが靖友は骨格が細い。そしてこのゴールデンレトリバーがでかい。毛並みもいい。犬の世界に美形や不細工というのは大した意味を持たないが、たぶん彼はイケメンだ。


「ただいま靖友」

『おかえり夏樹チャン。で、こいつ誰』

「あ、怒ってる」

『だァれぇ?』

「怒ってる。 あのね、彼は隼人くん。友人、ていうかいくつか作品で絵を書いてくれてる人の飼い犬なの。彼が海外に用事が出来て、2週間日本を離れるからって相談されてね」


2週間となるとペットホテルと言うのも窮屈だろうという事で夏樹が自ら申し出たそうなのだ。犬好きの彼女らしい選択であるが、靖友にとって嬉しいものではない。

靖友の血には狼の遺伝子が多く入ってる。犬のくせに散歩がそれほど好きではなく、起きるわけもないいざという時のために体力を温存したくなる。群れの存在を重視して、自分と夏樹という群れに対して固執してしまう。
そこに現れたよそ者など気分のいいものではない。むしろ不愉快だし、警戒もする。


「や、靖友ごめんね。そんなに唸らないでよ」

『やだよ夏樹チャン!夏樹チャンと俺だけの愛の巣になんでこんなオス!』

『冷たいな靖友、相変わらずだ』

『……さっきからテメェ何言ってんのォ?』


その口調はまるで自分を知ってるようだが、こちらは全く知らないのだ。最近他の犬と話したのなんて真護がいいところだ。こんなゴールデンレトリバーは知らない。
隼人は一瞬きょとんっとしてから何かに気づいてハッとした。


『あーあーあー!そういうことか!』

『なんなのお前』



 

 
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