ワンだふる・でいず
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2週間という期間はあっという間だった。3時間後には隼人の飼い主が隼人を迎えに来ると決まっている。すっかり隼人のいる生活に慣れ始めた夏樹は隼人の首に抱きついて豊かな毛に頬をうずめていた。
「寂しい」
『ははっ、俺もさびしいよ夏樹』
「寂しい」
『はははは!靖友うらやましいか』
『っせ!ほんとむかつくなテメェ』
『うん、それでいいんだよ』
隼人はクスクスと鼻を鳴らした。その鼻息がくすぐったいらしく夏樹も笑ったが靖友と隼人は会話を続けた。人間には分からない声だが、喉の鳴る音を振動で感じる夏樹はせっかくだから邪魔しないでおこうと決める。
『俺さ、おめさんにとってちょっと面倒な奴って位置づけらしいんだ』
『はぁ?誰が決めたんだよそれェ』
『靖友が言ったんだよ』
『あぁ!?』
『上手くいってるはずだよ。 俺のこの行動で靖友の中の俺のイメージができたはずだし、俺の事忘れないでちゃんと教えてくれよ』
『………』
さっきから全く会話が成り立っていないように感じ、靖友は思わず歯をむきだしそうになった。全て隼人だけが納得して会話を進めるものだから靖友には何を言っているのかさっぱり分からなかった。数日目には、隼人は未来からきた犬なのではないかと思ったほどだ。
それを伝えれば彼は大きな声で笑うと、おしい。と言った。さっぱりである。