ワンだふる・でいず
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草薙夏樹という作家の執筆の仕方はある意味他力本願である、と何かの雑誌だかコラムに書かれた事がある。ネタだしなどと言っておおまかなストーリーは出す癖に進行中はそのキャラクターが勝手に動くのを待つというキャラクター任せな執筆法である。それを他力本願と言ってしまえばそれまでだが、つまりそのキャラクターが動かなければ執筆は進まないのである。
「はい、詰まったー」
『ほー』
カーペットに寝転びながらノートパソコンのキーボードを打っていた夏樹は軽く投了を口にしようとした。もちろん、投げだせるわけではないが。靖友はそのそばのソファで寝ころびつつ夏樹がゆっくり動かす指がいつ止まるのか見ていた。
今彼女の書いていたのは月刊誌の連載で、今はまだ書きための段階である。彼女の趣味のようなもので、担当からOKが出ていないにも関わらずもう5話まで進んでいる。つまり今は書かなくてもいいのだが。
『じゃあ俺と遊ぶぅ?』
「ヤストモが恋に落ちる気配を見せない」
『……はい?』
「おや首かしげて可愛いね靖友」