君が居る今、私の知らない過去
□笑顔の裏側には
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「どうしたら、どうしたら…自殺してみて…ダメだ。サッカーだけはやらなきゃ」
「……」
「そうだ、有紗を…ああ、あはは、何だ、簡単じゃないか…」
「おい、フィディオ。有紗を傷つけたりしたら殺すぞ」
ジャンルカがため息を吐きながらフィディオを睨んだ。にらまれた本人は一度瞳孔を開いたままジャンルカを見た。やっとこちらを見たなと言おうとして止まった。
フィディオは目を細めニッコリ笑っていたが、腰から首筋までがゾクゾクッと冷えた。
「何言ってるんだいジャンルカ。有紗を傷つけるなんて誰だろうが、それこそ俺だろうが、殺すよ」
以前精神的に追い詰めた事があるにもかかわらず、それこそ今の言葉が全てだと声の中に含まれている。
その光のない瞳と、真剣な言葉にジャンルカは鳥肌を抑えるため腕をさすった。
「なんだか気分がいいや。ねえジャンルカ、夜には帰っちゃうから昼にワイン開けちゃおうよ」
今度はいつもの笑顔でそう言うフィディオにどもりつつ、ああ。と言った。
「ただいま」
「おかえり、有紗!」
「…おかえり」
誰もが笑顔を浮かべたが、心底幸せだったのはフィディオだけだった。
NEXT 2012.8.25
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源田はいい男、フィディオはヤバい男。これは変わりません。