ワンだふる・でいず

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『夏樹チャンご飯はァ?』

「私どうしようかな、オレンジジュースでいいや」

『(またこいつ喰わねぇつもりかよ…)』


夏樹は自分の体調や容姿に無頓着だ。飼い犬である靖友がそれを心配するのもおかしいのだが、時折ある青白い顔は心配になってしまう。靖友は素直に認めないが、このご主人が心配で仕方ないのだ。
ガブッと肉をひと噛みして口元を夏樹に近づける。首をかしげつつ口元に手をやると、ポトッと赤い肉の欠片が落ちてくる。ひんやりと冷たかっただろうそれも、靖友の口と夏樹の手の温度でぬるくなったそれは、お世辞にも気分のいいものではない。
しかし靖友がこれをわざわざ渡してきたということは、おすそわけ。といことだろうかと夏樹はキュンっとときめいて靖友の太い首周りに腕をまわして抱きしめる。


「食べろってことだ」

『ちっげェよ!肉喰えってのォ、これじゃなくて焼いてるやつ』

「ふへへ、靖友ありがとう」

『……いいよぉ…もぉ…』


こういう時に言葉が通じないというのは不便ではあるが、犬の気持ちを勝手に想像して楽しめているならいいのかもしれない。
首を抱きしめられているために食べにくくなったが仕方ないのので夏樹の頬をべろりと舐める。もともと犬の口は獣くさいが生肉のせいで余計に獣くさい。が、夏樹はやはり何か嬉しいらしくまたグリグリと頬ずりを始めた。

仕方ない、これ以上食事ができないようなら甘噛みしてやろう。としばらくは好きなようにさせてやることにした。


NEXT 2015.4.25
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可愛い靖友君が飼いたいだけの私です。
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