ワンだふる・でいず

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傘を子犬の上にさしてジャンパーを脱ぎその内側で子犬をくるむ。大きさの割に軽い子犬は折れてしまいそうでドキッとしたがそれどこれではない。走り出すと傘が邪魔だと早々に畳んで走り出した。
もちろん動物病院へである。

動物病院に行くと順番待ちも何もなく、慌てた看護師と獣医に子犬は連れられて処置室に入って行った。私は普段室内で仕事をこなすために落ちた体力のせいで荒れる息を整えるため、待合室に座りこむ。順番待ちしていた人たちは夏樹を慰めてくれたし、その飼い犬たちも私を心配げに見上げた。それほど夏樹はひどい状態だった。


「(疲れた…あの子は大丈夫かな…先生たち凄い顔だった……そんなにまずいのかな)」


処置が終わるまでの数十分は夏樹の頭の中から作品のネタなどなくなっていた。








子犬は栄養失調でさらに雨に晒され低体温状態だったという。ケージの中で眠っている様子は先ほどとは比べもんにならないほど落ち着いた様子で、夏樹は全身の力がぬける。


 
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