ワンだふる・でいず

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靖友は犬だが、夏樹という人間の魅力的さはよく知っている。明るく聡明で、容姿も美しく仕事もできる。性格だって思いやりもあれば優しくもある。家事もできるし、おおよそ大きな欠点などなさそうである。
夏樹は腕を組んで、うーん。と唸る。


「私小説書くので青春時期を使い切ってるんですよね。むしろ明るい青春だったらあんな作品書けなかったと思いますし」

「ええ…もったいない。恋人って良いですよー。活力って感じで」

「活力とは」

「私の彼氏とかすっごい頑張り屋さんで一緒にいるだけで自分もやる気出るんです!あ、見ます?」

「ううん、本当に結構です」

「なんでですが!すっごく可愛くてかっこいんですよ!」

「活力どこですか」

「もう!本当に興味ないんですか?好きなタイプとかくらい」


もう新しい作品の会議と言うよりただの恋愛話だ。女子とは幾つになっても恋愛話が好きだと言うが、夏樹はそうでもないのでこの会話は十分貴重である。
靖友には何が楽しいのか分からないが、夏樹がまた考え込みながらもこちらを呼ぶ。どちらかと強い強制力を感じさせる呼び方で。


「靖」

『…はーい』


自分の足元の床に指をさすのはそこに座れという意味だと幼いころに教え込まれた。教え込まれたとおりに指の差す床にお座りすれば夏樹は靖友をわしゃわしゃと撫でる。気持ちいいので靖友はされるがままだ。
夏樹は何度もうなずき、靖友を撫で続けた。


「…靖友ですね」

「え?靖友くん」


「身体が大きい…身長が高めで細い骨格、切れ長の瞳、運動能力、甘えてくれて、でも心配してくれて世話焼きで、いつも一緒にいてくれる。 あと靖友が喋れたらすっごく口が悪いんだけど時々優しい言葉も言ってくれて、ツンデレ的な感じ」


 
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