KOH(KINGU of HETARE)
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まずい状況だ。この電車を逃すと朝練に間に合わなくなる。
いくら脚に覚えがあっても階段を駆け上がる動作に自信はない。
ピー―――ッ
「あ、」
無常に響く発車の合図が鳴る。間に合わなかったのだ。
「まずい。どうするか…っ!?」
速めていた歩調を緩めた途端、階段を一段踏み外した。かなり上の方にいた俺は重力に従って下に落ちていく。
「(っ落ちる!)」」
襲ってくるであろう衝撃に反射で目を固く瞑るが、いつまでたっても衝撃と痛みが来なかった。
感じたのは腕への圧迫感だけ。
恐る恐る目を開けると、帝国の制服を着た女生徒が俺が落ちないようにと左二の腕を掴んでいた。
綺麗な女子だ。
「、大丈夫?」
「……っぁ、あ、はい!」
どもった!
女の子に支えられているだけで恥ずかしいのに。
体勢を整えると彼女がにっこりと笑って手を放した。少しだけ残念に思えた。
「私もギリギリ上に上がれたんだけど乗り遅れちゃったんだ。朝練には遅刻」
「あ、俺、も」
「やっぱり。あの笛ビックリするけど、怪我したら朝練どころじゃなくなるよ」
「あ、ああ」