KOH(KINGU of HETARE)
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「始め!」
「てぇぇぇ!」
ダンッパンッ
踏み込み、音、残心。
全て“始め”の声と同時に終わった。
「籠手あり!」
主審、副審と3つの赤い旗を上げた。
誉の襷である。
あまりの速さに観客の歓声も幾分か遅かった。源田と佐久間に至ってはポカンと口を開いていた。
「な、んだ今の」
「開始の合図で決まった…速すぎて籠手に当たったのも気づけなかった…」
源田達もサッカーというスポーツに携わる中で、一般人より動体視力があると思っていた。
しかし蹲踞から立つまでの動作は無いに等しく踏み込まれ、音がした。
「何ていうんだろうな、あれは。刺し籠手か?」
「はう…かっこいい」
「シッ!始まるぞ」
「2本目!」
「めぇぇぇぇん!」
パンッダンッ
「っ面あり!」
今度も歓声は遅れ、審判の1人は旗を腿のあたりでパタパタと振りながら交差した。
見えもしない速さだったが、確かに入っており、残心も踏み込みも完璧な刺し面だった。
「勝負ありっ」
赤い旗があがったまま、試合が終わる。