君が居る今、私の知らない過去
□包丁と調理
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「有紗は昔から料理、味付けが本当にうまかったよね」
「……」
そう笑ったフィディオに有紗はお礼を言い切れず、眉をヒクリと動かした。彼女の手には包丁があり、まな板の上には何回か包丁がひかれ表面がデコボコとした豚バラがあった。
有紗の料理は本当に出来上がりは美味しい。しかし過程はあまり誉められるほど美しくはない。
「包丁使いがなぁ…」
「うるさい」
「皮剥くのもピーラーだし?」
「……うるさい」
美しさが求められたなら有紗はそれ程の料理の腕はない。(出来上がりは美しく見えるようにできるが。)
有紗がムーと目を細めると、フィディオがニッコリと笑いながら手のひらを差し出してきた。
「何」
「貸して」
「………」
つい怪訝な顔をしてしまうが包丁仕事は好きでない有紗はついフィディオに包丁を渡す。
すると彼はまたニッコリと笑って躊躇うことなく豚のブロックに包丁をたてていく。これがまた上手い。
「…っ上手」
「マルコによく手伝わされるし、有紗が昔から料理をしてたからだよ」
「私が?」