君が居る今、私の知らない過去
□窓からの訪問
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コンコン
ベッド横の、少し足側の壁にある窓ガラスからノック音がする。ふて寝して寝ぼけた頭は窓ガラスから何故ノック音がするのかとか、泥棒の危険だとかそんな疑問を持つことなくカーテンと窓を開けてしまったのだ。
「有紗、寝てたのか?」
「(げんっ…!?)…幸、次郎…?」
目の前にあったのはあのKOGこと源田幸次郎だった。彼はまどのすぐ下にある屋根の上に立ち、窓の外ぶちに指をかけている。
まどから顔が見えるように、腰を曲げていて正確な身長は分からないが、フィディオより少し高いかもしれない。190cmは間違い無くいっている。
「悪い、起こしたな」
「あ、大丈夫。ふて寝」
「そうか」
何の違和感もない。源田も当たり前に会話をしているし、もしかしてこの屋根を使って部屋に来るのは当たり前の事なのか。
「(20歳にもなって…いや、それより何より、こんなベタベタなシュミレーションゲームみたいなのって有り得ないだろ…)」
「今日母さんがアップルパイ作ったんだ。食べるか?」
「! うん」
パイときいて思わず元気に頷くと、源田はにっこりと笑って手を差し出してきた。