君が居る今、私の知らない過去
□源田家
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「有紗ちゃん、幸次郎おきなさい」
「……ん」
「…わかった、起きる…」
「んぷ」
「こら幸次郎!起きるとか言いながら力強くしないの!有紗ちゃん窒息しちゃうわよ!」
「……悪い」
「ぷはっ…へ、いき」
「「……」」
「「ぐう」」
「二度寝しない!」
高い女の人の声がして、有紗と源田は目を開く。2人共ベッドの上で寝ていたらしく、目をこする。
「もうっ、呼んでも降りてこないからどうしたのかと思ったら」
プリプリと擬音が聞こえるように頬を膨らませ、腕を組んでいる女性を見る。
こげ茶色の豊かな長い髪と高い身長に、すぐ彼の母親であることが分かった。綺麗な人だが、似ているのは髪だけで顔は父似なのか。
「お兄ちゃんも帰ってきたから夕飯にするわよ。有紗ちゃんも食べていきなさい、和深さんには言ってあるんでしょう?」
「あ、いや」
「俺が寝る前にしといた」
「…ありがと」
なんとも用意がいい。
「速く降りてきなさいね」
「ああ」
「ごちそうになります」