君が居る今、私の知らない過去


□源田家
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源田の母が部屋を出て行くと、源田は、うんっと体を伸ばした。



「母親の源田英子。有紗は“おば様”って呼んで敬語使ってる。兄は耕一。言語療法士で25歳。“耕一さん”って呼んで敬語。父は剛。広告代理店のちょっと偉い位置にいてあまり帰ってこない」


「“おば様、耕一さん、おじ様”」



まるで何度も口にしていたようなそれに数回頷く。



「覚えたか?」


「うん」



源田の優しさに思わず笑って頷いた。そうすると寝る前のようにクシャリと前髪を乱した。それもやはり嬉しい。



「降りるぞ」



源田の後ろについて、源田家の食卓を一緒にさせてもらう。記憶も今までの接し方も覚えていないのに不審がられたり違和感が起きることはなかった。



「(私って今も前も変わらないんだ…)」


「有紗ちゃん、今日のお風呂はLA●SH入れましょう。何がいい?」


「(お風呂に入るのも普通!?)“アボバス?”がいいです」


「いいわねアボバス」



 
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