君が居る今、私の知らない過去


□幼なじみの悲痛な声に
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玲名が1日ベッタリとしてくれて、おしゃべりなクラスメートによって“看護学校フィディオ・アルデナ出没事件”は落ち着きを見せはじめた。店で会った3人が1度も話しかけて来なかった事が少し怖かったが、特に害も感じなかったので放っておくことにした。

帰宅すると家には鍵がかかっており、母が準夜であった事を思い出し夕食を作らなくてはとため息を吐いた。
カバンを投げてキッチンに行って冷蔵庫を開ける。



「(何もない…トマト、チーズ、生ハム…パスタも無い。米か。あれなら作れるかな)」



メニューを決めた有紗が冷蔵庫を閉めたと同時、玄関の開く音がした。
すぐにフィディオだろうと声を出す。



「おかえりなさい」


「……有紗」



リビングに入ってきたフィディオが床にバッグを落として有紗を抱きしめた。



「っ有紗」


「え?」



初めて家の前でされた物とは違う、かきむしるような雰囲気を持った抱擁だ。



「有紗、有紗、有紗」


「な、に」


「これは誰の匂い?色んな匂いがするけど、1人だけ強い。髪もそいつの匂いがする」


 
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