君が居る今、私の知らない過去


□幼なじみの悲痛な声に
2ページ/2ページ




「!?」



すぐに源田の事だと分かった。確かに玲名ともずっと一緒にいたが、源田とは昨日も一緒にいたし帰宅時も彼がバイクで送ってくれたのだ。
誰かが見ているような事は、なかった。



「(なんで…)」


「有紗、どうして?俺が嫌いになった?」



抱き締められ、顔も体もすっぽりとフィディオに覆われた有紗には彼の顔が見えなかったが、声と体の震えはすぐに分かった。



「有紗、君は忘れてしまったかもしれないけど、君はきっと俺を愛してるんだ。そうじゃなければ看護師になろうとするはずがないよ。それともエドガーやマークの為?そんなの許さないよ。だって、俺は誰よりも一緒に居たじゃないか。なのにどうして今更離れていくの?忘れているの?」



有紗は特に反感も抵抗もしなかった。あまりにも悲痛で、申し訳なくて。



「私とフィディオは恋人だったの」


「…違うよ。でも愛してくれていたはずだ。そうに決まってる!」


「………」



変なの。

有紗は目を細めた。フィディオの全てから、言葉に確信のような音を感じる。何故そこまで自分に愛されたいのか。



「(こんな性格も見た目も良くない女)」


「有紗、有紗、有紗」


「…うん、ごめんね」


「有紗、俺は今、傷ついてるよ。死んでしまいたくなる位、君のせいで、君の為に」


「っ」



有紗の目が大きく見開かれ、体が強張る。



「ご、めん、ごめん、なさい」


「……有紗、ねぇ、俺を愛してよ」





「(ああ、フィディオを傷つけた)」



ポロ ポロ と涙が落ちていく。



「(ごめんね。ごめんね)」




NEXT 2012.3.27
―――――――
フィディオが危ない人。
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ