君が居る今、私の知らない過去
□愛しい臆病者の弱み
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sideフィディオ
“俺は今、傷ついてるよ”
“死んでしまいたくなる位”
“君のせいで、君の為に”
我ながら酷い言葉だと思った。けれどそう言えば有紗は体を震わせて俺に何度も謝ってきた。
知っているから、そう言った。
君が世界中から嫌われていると思っていることを。
これ以上誰かに嫌われるのが怖いこと。
記憶が無くなっても変わらない。
可愛い有紗、愛しい有紗。
君は俺を愛してくれていたはずだから大丈夫。俺を傷つけたくないから、また愛そうとしてくれるだろ?
ポロポロと涙を流す有紗には申し訳ないけれど。
しばらく有紗を抱き締めて、さっきの自分と同じ声とは思えないほど優しい声が出た。
「有紗、お腹が減ったよ」
俺の声にビクリと一瞬肩を震わせてから、俺を見上げる。
「…アランチーニ、作ろうと思ってたの」
「本当?楽しみだなぁ」
馬鹿な有紗。愛しい有紗。
君を嫌いになるなんて有り得ないのに。
でも俺に嫌われたくないと思ってくれた事が嬉しいよ。
それが例え“世界中の誰も傷つけたくない”“世界中の誰からも嫌われたくない”でも
NEXT 2012.4.6
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別にヒロインがフィディオを好きだったという確証はありません。