君が居る今、私の知らない過去
□天使だって成長する
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「あ、今日チームメンバーが全員来るんだ」
「え」
「夕方練習見においでよ、パスあげるし」
右手に握らされたICカードにはサポートマネージャーとある。
「嘘じゃん」
「いいの!帰りは外で食べよ。奢るから」
「………仕方ないな」
ICカードをしまって息を吐いた有紗に、フィディオはニコニコと笑った。
昨日の声を荒げた彼は微塵も見られない。有紗もいつもと変わらない様子で、母も特に気づいたりはしなかった。
「有紗、泣いたか?」
「え?」
「目が少し赤い」
玲名が有紗の目尻を親指で撫でた。撫でられた左目を閉じて少し身じろぐ。
擦ったりせず、すぐに冷やしたのに。と有紗は小さく驚いた。
「私は有紗が髪を3mmだけ切ったって気づくぞ」
「どや顔されても、それ自慢になるの?」
昨日のフィディオとのやり取りを話せる訳もなく、大丈夫だよと笑うと玲名は眉を下げて頷いた。まだ納得はしていないようだが、これ以上聞いても有紗は答えないだろうと諦めたらしい。
こんなに綺麗な友人に心配して貰えるなんて、幸せ者だな。としみじみした有紗は礼だけ述べた。