君が居る今、私の知らない過去
□酒盛りでもヤンデレの香り
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風丸に平謝りしてなんとか泣き止んだ有紗は、肉巻きおにぎりが食べたいと言う彼の要望に応える事で罪滅ぼしを始めた。
「(あ、焼き肉のタレない。醤油、砂糖、みりん、胡麻…一味を少々っと)」
「相変わらず有紗は料理美味いな」
「え」
後ろから声をかけられ、タレを作った皿が一瞬傾く。声をかけた風丸が危なげなくその皿を傾いた方から支える。
揺れたタレが彼の親指をぬらしたが、それはペロリと舐められた。
「! 美味い」
「ほんと?肉巻きおにぎり作ったことなくて、タレもきれてたから即席なんだ」
「即席?もの凄く美味いから楽しみだよ」
そう笑う彼はまるで普通で、あんなに冷たく笑っていたのは幻覚だったような気さえした。
「焼くの手伝う」
「じゃあこのにんにく油ひいて温めて」
「ん」
にんにく油を温めてオニギリを入れ、火を通す。そこにタレかけながら焼く。
食欲をそそる匂いが漂う。風丸の喉が上下に動く。
「うわー…ビールあるか?」
「風丸飲める口?美味しいヴァイツェンと黒があるから出すね」
「まあ成人だしな。楽しみにしてる」