君が居る今、私の知らない過去


□ティラミスとカモッラ
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イタリア、ナポリ。
カラリと乾いていながら潮風を確かに感じる。
知らないはずの空気を『懐かしい』などと感じる自分が、芝生の時同様気持ち悪くなった。


有紗のパスポートは最近更新したもので、しかも赤(有効期限10年)。成人してからさほど経っていないにも関わらず、だ。



「疲れてないかい?」


「あんまり。むしろ楽しかった。ファーストクラスって凄いね」


「楽しんで貰えて良かったよ」



空港でも扱いが違い、成田で食べたチーズケーキは生涯忘れない自信がある。あとシャンパンも。

フィディオは有紗と繋ぐ手を指を絡ませる形にして引く。日本で最初に会った時のようなサングラスをしているが、やはりオーラとでもいうのかフィディオという人間を隠すには心許ない。

だが有紗は、あんまり目立つなよ。と言っただけで手を振り払ったりはしなかった。



「有紗!まず家に行こう。荷物置いて、出かけよう」


「出かけるって、何しに」


「美味しいティラミスを食べに行こう。有紗が好きだった店だよ」


「! 急ごうフィディオ」


「(素直で可愛いなぁ…)」


 
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