君が居る今、私の知らない過去
□水上の敵達
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「明日はいい加減ヴェネツィアに行こうと思う」
「(お前にだけは言われたくない…)」
スポンサーとの挨拶や会話を済ませたフィディオと有紗は小休止とばかりにアンティークなソファに座った。
気に入ったヒレステーキを食べながら有紗は目を細めた。赤ワインもよく合う。
「美味しい」
「聞いてよ」
「聞いてるよ。明日にはヴェネツィアでしょ?」
着物を汚さないよう細心の注意を払ってヒレ肉を食べる。こんなに柔らかいのは何故だろう。
「有紗、さっきからずっとそれにウットリしてるけど…タリアータそんなに美味しい?」
「美味しい」
「あーん」
「お行儀悪い」
口を開けて顔を寄せるフィディオの顔を離れさせるため、鼻から顎にかけて手のひらを置く。グイッと離す。
「ぶう」
「止めて、あんまり変な動きすると着崩れちゃう」
「…萌え」←日本語
「誰に教わった!」
着物の着崩れを萌えとする思考回路については何も言わず、有紗はフィディオをグイッと遠のけた。