君が居る今、私の知らない過去
□君の為の檻
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ジャンルカに、頑張れ。と何故か激励を受けてナポリに戻ってきた有紗は、これまた何故かウキウキとしているフィディオに首を傾げた。
「フィディオ、何かいいことあった?」
「んーん、別に」
そう言いながらやはりご機嫌で、これからいいことがおきたりするのだろうか。と特に深くは聞かないまま荷物を部屋に全て運び込んだ。
運び込んだといっても、1泊分の荷物などたかが知れている。
「よし、後で洗濯しよう」
一息つくようにソファに体を投げる。革で作られたブラウンの2人掛けソファはツルツルではなくサラサラとしていた。とても好みだ。
フィディオに割り当てられたこの部屋はまるで有紗のために作られたように彼女が好む家具が揃えられている。
「よく見たら全部ブランド物だ」
さり気ないがどれも質がいい。ベッドはクイーンサイズで程良くふかふかとしている。
「(まさか私の為に用意したわけじゃないだろうけど…でもあまりに好みにぴったりだ)」
フィディオならやりかねない。と考えつつもどんなブランドがあるかなどはあまり深くは探索しなかった。