君が居る今、私の知らない過去
□夢にまで見た感触
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何故フィディオの口から源田の名前が出るのか、混乱し始めた有紗の頭では理解出来なかった。
もちろん彼女はバカじゃない。電話をする有紗から聞いただろうし、付き合いは長いのだから親友の話しくらいしたかもしれない。
それでも、有紗は混乱した。
「幸次郎に何する気なの…」
真っ先に想像した最悪は、源田が傷付くことだった。
フィディオはクスクス笑いながら小首を傾げた。
「何にも?だって“幸次郎”は別に有紗の恋人じゃないだろ」
「彼は、親友だよ」
「親友、かぁ。ギリギリだね。気に入らないや」
「っ止めて!幸次郎に何もしないで!」
有紗は目を見開きフィディオの腕を掴む。
自分にとってはたった数ヶ月の付き合いだが、源田幸次郎という親友の人柄は理解している。底抜けに優しく、自分を大切にしてくれる親友。高校を出てからも自分を支えてくれただろう大切な友人だ。
だから、自分のせいで彼が傷つくなんて考えただけで絶望したくなる。
「違うの、本当に、親友なの」